合板(読み)ゴウハン(英語表記)plywood

翻訳|plywood

デジタル大辞泉 「合板」の意味・読み・例文・類語

ごう‐はん〔ガフ‐〕【合板】

《「ごうばん」とも》薄い板を3枚またはそれ以上の奇数枚、木目が直交するように重ねて接着剤で張り合わせたもの。ベニヤ板プライウッド
[類語]ベニヤ板

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精選版 日本国語大辞典 「合板」の意味・読み・例文・類語

ごう‐いたガフ‥【合板・ガウ板】

  1. 〘 名詞 〙 和船のやぐらの歩(あゆみ)のあいだ、すなわち二本立から艫の横上にかけて渡してある二本の桁のあいだをふさぐ板。帆柱を起倒するときのために、取り外し式とする。合(ごう)の道をふさぐ板なのでこの名がある。碁板(ごいた)。〔和漢船用集(1766)〕

ごう‐はんガフ‥【合板】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ごうばん」とも ) 木材を薄くはぎ取り、その木目の方向を縦横交互に変えて数枚張り合わせた板。ベニヤ板。〔すまいの四季(1956)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「合板」の意味・わかりやすい解説

合板 (ごうはん)
plywood

一般に木材を0.5~4mmに薄くむいた板,すなわち単板(ベニヤveneer)を積み重ね,接着剤で貼り合わせて1枚の板にしたものをいうが,通常は各単板の繊維方向を1枚ごとに直交させる(図)。単板の組合せ方は,合板の安定性を保つために厚さの中央に対して対称構造をとり,そのために奇数枚合せが普通である。厚さは2.5~30mmくらいまでが一般である。できあい品は,日本の場合,幅・長さが91cm×182cm(三六(さぶろく)板),世界的には121cm×242cm(四八(しはち)板)が標準サイズである。合板用原木は,日本では東南アジアから輸入されるいわゆるラワン類が圧倒的に多い。国産材ではブナ,カバ,ナラ,ハリギリなどが用いられていたが,現在では少なくなった。アメリカではベイマツ,サザンパインなどの針葉樹,北欧ではシラカバ類,中欧ではマコレなどのアフリカ材,ポプラなどが使用され,オセアニアではラジアタパイン合板が多い。

 合板の特徴としては,(1)比重のわりに強度が大きい,(2)含水率変化による収縮膨張に異方性が少なく,その量も小さい,(3)完全耐水性のものも得られる,(4)断面の単板の組合せを変えることによって,ある程度その特性を設計して製造することができる,(5)比較的安価である,などがあげられる。

合板には多くの種類があるが,JAS(日本農林規格)では,普通合板,特殊合板構造用合板,コンクリート型枠用合板,足場板用合板,難燃合板および防火戸用合板を規定している。ただし,特殊合板については,表面にオーバーレイ,プリント,塗装などの加工をして美観,表面性の向上を図ったいわゆる化粧合板のみが規定されている。しかし,特殊合板を普通合板に対比する本来の広い意味で解釈するとランバーコア合板のような構成特殊合板,防腐・防虫合板のような薬剤処理合板および成型合板など,さらに数多くのものをその範疇(はんちゆう)に入れることができる。またJASでは接着層の耐水性によって合板を次のように類別している。(1)特類合板 72時間の連続煮沸試験に合格するものであって,屋外または常時湿潤な状態での使用が可能である。構造用合板,足場板用合板には特類の接着性能が要求されている。おもにフェノール樹脂系接着剤が用いられる。(2)1類合板(タイプⅠ) 煮沸繰返し試験(4時間煮沸,20時間乾燥さらに4時間煮沸処理ののち接着力試験を行う)に合格するもので,フェノール樹脂,ユリアメラミン共縮合樹脂接着剤を用いて製造される。長期間の外気および湿潤露出に耐えられるとされている。(3)2類合板(タイプⅡ) 温冷水浸せき試験(60℃の温水中に3時間浸せき後接着力試験を行う)に合格するもので,ユリア樹脂で接着されたものが主である。(4)3類合板(タイプⅢ) 常態接着力試験に合格するもので,増量されたユリア樹脂などで接着される。湿気に対してはあまり抵抗できない。

合板の物理的,機械的性質は,構成単板の樹種,単板の組合せ方,接着層の存在,合板の製造条件などに影響される。(1)収縮,膨張 木材は繊維飽和点以下において,乾燥または吸湿によって収縮,膨張するが,その組織構造のために収縮,膨張の量は著しい異方性を示す。合板での含水率変化による収縮,膨張は,これを構成する単板が交互に直交するため,単板の自由な動きを抑制し合うことになり,異方性が少なくなるとともに,収縮,膨張率も小さくなる。これは合板の大きな特徴であり,長所となっている。(2)機械的性質 合板の機械的性質は,これを構成する単板の性質(樹種,単板切削条件などによって定まる)と断面構成条件(単板厚さ,組合せ方など)におもに支配される。単板,すなわち木材の強度,ヤング係数は繊維方向に大きく,これに直交する方向では極めて小さい。したがって,合板の機械的性質は断面における単板構成に大きく影響されるとともに,同一合板でも表板の繊維方向と荷重方向との関係で大きく変化する。

日本では近年まで,主として化粧を目的とした建築内装材,家具材料,仮設材料,その他の工業用材料として使用されていたが,最近では耐力を必要とする各種の構造用部材としての使用も多くなってきた。木造住宅耐力壁の面材,床,屋根下地材などである。建築内装材,家具表面材としては,単板オーバーレイ合板(化粧単板ばり合板,突き板合板),各種合成樹脂オーバーレイ合板,合板を台板としてその上に木目や各種の模様を印刷したプリント合板などが多量に使用されている。
改良木材
執筆者:

今日的な意味での合板を世界で最初に作ったのは,19世紀前半,西ドイツ指物師M.トーネットだろうといわれているが,商業ベースに乗る合板生産の最初のものは,1905年アメリカのオレゴン州ポートランドに開設されたカールソン合板工場とされる。日本における合板製造の歴史は比較的古く,1907年に浅野吉次郎が浅野木工所において作ったアサノ板が最初であるが,これはまったく独自の着想によるものであった。当初は,接着剤としてはにかわが主として使われたが,その後カゼイングルー,大豆グルーへと変化し,第2次大戦以後は日本においても,耐水性にすぐれた合成樹脂接着剤が主流となり,高度な接着性能をもった合板が生産されるようになった。一方,原木は,最初すべて北海道産の広葉樹であったが,1922年以降,南洋材であるラワンが用いられるようになり,低廉な合板の大量生産が可能になり,現在では原材のほぼ95%がラワンとなっている。

合板は,関東大震災(1923)を契機に建築用に使用されるようになり,現在では2次加工技術の向上とあいまって,建築や土木用材をはじめ家具,建具,家電キャビネットなど,さまざまな方面に使用されている。用途の多様化にともなって生産量も拡大を続け,現在では全世界の生産量(数量ベース)の約2割を占め,アメリカ(約4割)に次いで世界第2位となっている。合板工場は,製造している合板の種類によって,所在地や規模にかなりの違いがある。すなわち普通合板工場は全国に広く分散し,従業員100人以上の工場が約6割を占めるが,特殊合板工場は関東,東海,近畿といった大消費地の近くに集中し,従業員50人未満の工場が約8割を占めている。合板の価格は,ラワン輸出国の輸出政策や天候,日本の設備投資動向や住宅建設動向に大きく左右され(合板需要は建築・土木向けが圧倒的に多い),従来から激しい値動きを繰り返してきた。このため合板関連企業の経営環境は安定を欠き,1978年にはトップ・メーカーで第一部市場上場企業の永大産業が倒産するほどであった。その後もこうした不安定な経営環境は基本的に変わっていない。
木材工業
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「合板」の意味・わかりやすい解説

合板
ごうはん
plywood

木材を薄くむいて板とし、板の繊維方向が互いに直交するようにして奇数枚を積み重ね接着剤で貼(は)り合わせて1枚の板としたもの。合板をつくるのに用いる薄板をベニヤveneerというが、日本では合板を誤ってベニヤまたはベニヤ板とよぶことがある。建築用途として屋根、内外壁、床、天井の下地材および仕上げ材、木造住宅の筋かい代替、コンクリート型枠、足場板、ドア、家具があり、楽器、運動用具、電気機器、車両、船舶など幅広い分野で用いられる。

 合板を構成する1枚の薄板を単板といい、表裏になるものを表板(おもていた)、裏板(うらいた)、中間のものを心板(しんいた)、中板(なかいた)という。広い面積の板をつくることができ、節、割れ、腐れなどの欠点を除去でき、方向による伸縮が改善され、表面に化粧材を張れば美麗な板が得られるなどの特徴がある。

[神山幸弘]

工程

合板の製造は、まず木材を薄くむいて単板とし、乾燥させたのちに、表板、裏板、心板とに選別し、欠点を除いたり、幅はぎをして寸法を整える。その後、単板に接着剤を塗布して積み重ね、加熱圧締を行って接着したのち、寸法裁断、仕上げ加工の工程をとる。合板用材には広葉樹でセン、シナ、ナラ、タモ、カバ、針葉樹でマツ、スギ、輸入材としてラワン類、メランチおよびセラヤ類、カプール類があり、広葉樹は主として表・裏板として用いる。単板の製造方法には、木材の年輪に沿ってベニヤレースにより連続して薄くむく方法と、木材の繊維方向にスライサーによりむく方法とあり、ベニヤレースでは板目の単板となり、日本で生産される単板の95%以上を占める。スライサーによれば柾目(まさめ)の単板が得られる。接着剤にはフェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリヤ系樹脂、ビニル系樹脂などがあり、グルースプレッダに単板を通して塗布される。接着は110~140℃の熱プレスで通常1平方センチメートル当り8~10キログラムの圧力で行う。

[神山幸弘]

種類

合板には普通合板のほか、心板に幅の狭い挽板(ひきいた)を用いたランバーコア合板、心板のかわりに蜂(はち)の巣状樹脂加工紙を用いた軽量合板、美観・表面の硬さ増強などの目的で普通合板の表面に樹脂板・紙・天然木薄板を貼ったオーバーレイ合板、表板に模様を印刷したプリント合板、塗装を施した塗装合板がある。成形合板には、目的にあった曲面を型押ししたものや、単板にフェノール樹脂を含浸させ高圧を加えた硬化合板がある。さらに使用場所の目的にあわせてつくった構造用合板、難燃合板、防炎合板、防腐処理合板、防虫処理合板がある。

[神山幸弘]

性質

合板の性質は単板の品質、単板の厚みと層構成、接着剤の種類によって異なる。フェノール樹脂、メラミン樹脂接着剤を用いた合板は吸湿・吸水速度が小さく、単板のはがれも軽微で耐水性に優れる。収縮、膨張は、互いに繊維方向を直交させているので方向による差はなくなり、板目方向の1/10~1/20となる。また割裂、割れに対しても強くなる。合板の機械的性質は、表板の繊維方向と荷重方向との関係で大きく変化し、表面をずらすような力が働くと心板が破壊するので、構造的利用では注意を要する。各種の品質を定めたものに日本農林規格(JAS(ジャス))がある。

[神山幸弘]


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百科事典マイペディア 「合板」の意味・わかりやすい解説

合板【ごうはん】

プライウッド,俗にベニヤ板とも。木材を薄い連続した板に切り取った単板(ベニヤ)を重ね接着したもの。木目が交互に直交するように重ねるため厚さに比し丈夫で表面に美しい木目を出せ,家具,建築材,車両など用途が広い。厚さは2.5〜30mmくらいまでが一般。幅の狭い板を心材としたランバーコア合板(ブロックボード),表面にプラスチックの膜や積層材をつけたプラスチックオーバーレイ合板,美しい木目の薄い単板を張ったベニヤオーバーレイ合板(化粧張り合板),表面に天然の木目など種々の模様を印刷したプリント合板,フェノール樹脂を浸透させて強度,絶縁性,耐水性などを高めた硬化合板など種々ある。材料にはラワン,ブナなどが多いが,南洋産木材の資源枯渇,地球環境問題などから針葉樹の割合が増えてきている。表面の化粧板にはヒノキ,マツなどが用いられる。接着剤にはフェノール樹脂メラミン樹脂などが使用される。
→関連項目改良木材シックハウス症候群ベニヤ板木材木材工業木材貿易

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化学辞典 第2版 「合板」の解説

合板
ゴウハン
plywood

奇数枚の単板を各層ごとに繊維方向を直交させて何枚も積み重ね,接着剤で張り合わせて1枚の板にしたもの.厚さは約1~30 mm まであり,単板の張り合わせだけでつくるベニヤコアー合板,中心に木材を用いてつくるランバーコアー合板がある.合板用原木は,かつてはラワン材がそのほとんどを占めていたが,最近ではラジアータマツ,カラマツなどを用いた針葉樹合板が急速に伸びている.ほかに国産材として,ナラ,カバ,マツ,スギなどが用いられる.接着剤は,フェノール樹脂,メラミン-ユリア共縮合体樹脂接着剤などである.合板の特徴は,節,きずなどのない広幅板が小径の原木から簡単にでき,強度的異方性が少なく,乾湿による膨張収縮性が少ないこと,単板の組合せで種々の特性を付与することもできることである.普通の合板に,プラスチック,紙,金属はく,化粧用単板などを張ったものや,プリント合板,難燃合板,防腐合板,強化合板など種々の特殊合板が開発されている.用途は,家具,建築材,車両内装材,梱包用などがある.なお,近縁のものに単板積層材(LVL)および集成材がある.LVLは単板を繊維方向に平行に積層し,接着して製造されるもので,積層を重ねて板材としてよりも骨組み材としての用途に向けたものが多い.集成材は厚さ20 mm 程度のひき板を,繊維方向に平行に積層し,接着したもので,構造用材料として用いられる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「合板」の意味・わかりやすい解説

合板
ごうはん
plywood

原木を薄くはいでつくった単板 (ベニヤ) を何枚も積層し,接着剤で張合せて1枚の板にしたもの。普通は単板の繊維方向を1枚ずつ直交させ奇数枚張合せるが,その枚数によって5プライ,7プライ,9プライと呼び,単板のみで構成し2次加工を施していないものを普通合板,そうでないものを特殊合板という。普通合板はその耐水性能により1類から3類まで類別する。1類は完全耐水合板といい,コンクリート型枠,屋根下地,台所の床などに使われる。2類は耐水合板で,内壁面,間仕切り板,テーブルなどに使用。3類は一般合板といい,天井板,側板,襖など比較的水分に接しないところで使われる。合板用原木には,ラワン材が一般的に使用されており,国産材ではぶな,ならなどの樹種も用いられる。特殊合板には,コア特殊合板,表面機械加工合板,オーバーレイ合板 (化粧合板) ,塗装およびプリント合板,薬品処理合板,成型合板などがある。近年は南洋材産地国の輸出促進策などにより,合板の輸入量は大幅に増加してきており,国内合板産業との競争が一層激化している。

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リフォーム用語集 「合板」の解説

合板

丸太を薄くむいた単板(たんぱん)を縦・横十文字に奇数枚、接着剤で貼りあわせ、両方向の強度を平均化すると共に、面としての広がりをもたせた板材料。JASでは合板の接着力の耐久性により特類(最も耐水性に優れている)、1類(完全耐水合板)、2類(普通耐水合板)、3類の4段階に区分している。→構造用合板

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「合板」の解説

ごうはん【合板】

木材を薄くそいだ板を、繊維の方向が直交するように交互に接着剤ではり合わせた板材。節(ふし)などの欠点をおさえて、縦横の強度が均等になり、膨張・収縮の率を減らす。広幅の板を工業的に生産できる。◇「ベニヤ板」「プライウッド」ともいう。

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農林水産関係用語集 「合板」の解説

合板

丸太から薄くむいた板(単板)を、繊維(木目)の方向が直交するように交互に重ね、接着したもの。

出典 農林水産省農林水産関係用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の合板の言及

【改良木材】より

…合板,パーティクルボード,集成材などのように,主原料として木材を使用しているが,これを天然のまま用いるのではなく種々の処理を施して新しく製造した木質系材料の総称。最近では木質材料とも呼ばれる。…

※「合板」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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