日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
未開社会における犯罪と慣習
みかいしゃかいにおけるはんざいとかんしゅう
Crime and Custom in Savage Society
B・マリノフスキーの初期の主要著作の一つ。1926年ロンドンで刊行された。彼がニューギニア北方のトロブリアンド島に約3年間居住し、原住民の社会規範を現地調査し、分析した成果である。マリノフスキーは、法は権利・義務の対抗を基礎とした行為規範であって、これらの行為規範の遵守は刑罰で強制されるからではなく、互酬性、公然性という拘束力をもつ社会機構によって担保されていることを明らかにした。本書において、刑法、民法の区別を用いた点などは評価しえないが、彼が法を社会統制の一つとして位置づけたことは法社会学という新学問を創設することに寄与した。日本における初訳は1942年(昭和17)に改造社から出版された。
[有地 亨]
『青山道夫訳『未開社会における犯罪と慣習 付・文化論』(1967・新泉社)』