杯細胞(読み)さかずきさいぼう(その他表記)goblet cell

改訂新版 世界大百科事典 「杯細胞」の意味・わかりやすい解説

杯細胞 (さかずきさいぼう)
goblet cell

杯状(はいじよう)細胞ともいう。管を形成する器官上皮細胞のなかに混じって単独に存在する細胞で,粘液を分泌する。小腸にもかなりみられるが,とくに大腸に多い。また気管上皮にもみられる。細胞は細長く,核は基底膜側に圧迫され扁平になっていることが多い。核上部から表面にかけては多数の粘液性の分泌顆粒がぎっしりつまってややふくらんでいて,ヘマトキシリン・エオジン染色では分泌顆粒が明るくぬけて見える。このように顆粒の密集する上部がつねに幅広くふくらんで明るく,下部が細い細胞の形が杯に似ているということから杯細胞と呼ばれるが,実際には杯よりも細長い。電子顕微鏡で見ると,細胞の下部には粗面小胞体が発達している。ここで合成されたタンパク質は核上部にあるゴルジ体へ送られ,ゴルジ体でさらに糖質がつけられて粘液性の分泌顆粒が形成される。分泌顆粒は核上部をぎっしり埋めているが,必要に応じて一種開口分泌によって一気に放出される。分泌顆粒は粘液多糖類を染める染色,たとえば過ヨウ素酸シッフ反応periodic acid Schiff reaction(別名PAS反応)によってよく染まる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「杯細胞」の意味・わかりやすい解説

杯細胞
さかずきさいぼう
goblet cell

粘液をつくり出して分泌する単細胞腺で,腺上皮,ことに腸管呼吸器などの粘膜上皮に多い。細胞体基部が細く,上端は大量の分泌顆粒のためにふくらんでいるので,杯の名がある。

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栄養・生化学辞典 「杯細胞」の解説

杯細胞

 ムチンを分泌する粘液分泌細胞で,上部が分泌顆粒でふくらみ平たくなっており,下部に核などが圧縮された様子であることから命名されている.

杯細胞

 小腸にあって先端部に多量の粘液性の分泌顆粒をもち杯状にみえることから命名されている細胞.

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世界大百科事典(旧版)内の杯細胞の言及

【痰】より

… 気道分泌液は一種の粘液であり,その構成成分はおもにムコタンパク質とムコ多糖類からなるムチンと呼ばれるものである。これらを産出する細胞は気管支腺と杯細胞の二つであるが,気管支腺がはるかに大きな役割をしており,その比率は40:1といわれる。気管支腺を顕微鏡で見ると,健康人では漿液産生細胞(径約35μm)と粘液産生細胞(径約50μm)とがほぼ同数であるが,慢性気管支炎などでは圧倒的に粘液産生細胞が多くなり,しかも大きさが増す。…

【気管】より

…この粘膜の表面は繊毛をもつ多列上皮でできていて,繊毛はいつも運動していて,空気に混じって侵入したちりなどが肺に達しないように,上方すなわち呼吸道の出口のほうへ送り出すように働いている。また多列上皮の一部をなす粘液を出す杯細胞があり,その働きで上皮の表面がいつも潤されている。これも空気中のちりなどを除くのに大いに役だつのである。…

【結膜】より

…結膜実質は,瞼結膜では瞼板に密着し,円蓋部結膜では眼窩(がんか)中隔にゆるくつながり,球結膜ではテノン組織へとつながる。結膜上皮の浅層には杯細胞(さかずきさいぼう)があり,粘液を産生する。角膜は,この粘液,涙液および瞼板マイボーム腺からの油液の3者で潤され,透明性を保つ。…

【十二指腸】より

…この部分を腸陰窩(か)または腸腺,リーベルキューン腺Lieberkühn’s glandという。ここにはパネート細胞Paneth’s cellがみられ,そのほか粘液を分泌する杯(さかずき)細胞(杯細胞は腸陰窩以外の粘膜上皮層にも点在する)や,セクレチン,コレシストキニン(CCK),モチリン,ガストリンなどの消化管ホルモンを分泌する種々の内分泌細胞がある。粘膜固有層にはリンパ小節が多数存在し,免疫防御機能を果たしている。…

※「杯細胞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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