ヘマトキシリン

化学辞典 第2版 「ヘマトキシリン」の解説

ヘマトキシリン
ヘマトキシリン
hematoxylin

C16H14O6(302.29).ヒドロキシプラジリンともいう.クロマン化合物の一つ.インド産マメ科Haematoxylon campechianumの心材中に,ヘマテインと共存する.微黄色の稜柱状晶.融点100~120 ℃.+99.6°.熱水,熱エタノール,グリセリン可溶,冷水,エタノールに微溶.アンモニアホウ砂などのアルカリ性水溶液に溶けて緋(ひ)紅色となり,酸性水溶液中では黄色にかわる.空気中に放置すると赤色色素ヘマテイン(haematein,C16H12O6(300.27))を生じる.鉄(Ⅲ)イオンがあるとこの変化が速い.媒染剤と結合するとキレートを形成して染色剤となり,核,染色体,ミトコンドリアなどを青紫色に染めるので,動物,植物の組織染色用に広く用いられている.また,アルカロイドの滴定指示薬,銅および鉄の比色試薬などにも使われる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘマトキシリン」の意味・わかりやすい解説

ヘマトキシリン
hematoxylin

マメ科のロッグウッドを細断し,抽出した色素で,熱湯,アルコール,エーテルなどによく溶ける。ヘマトキシリン自体には染色能力がないが,酸化されてヘマテインとなり,これが陶土類 (アルミニウム) のような塩基と結合して,初めて染色性を獲得する。現在,最も広く行われている組織切片染色法に使われている色素。一般にエオジンとの重染色法に使用され,細胞核を染色させるが,それ以外にも染色液の種類によって糸球体,骨格筋の横紋,神経線維髄鞘などの染色にも利用できる。どの場合も目的物は青藍色ないし濃紺色もしくは黒色に染め出される。

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栄養・生化学辞典 「ヘマトキシリン」の解説

ヘマトキシリン

 細胞核を青紫色に染色する色素.

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世界大百科事典(旧版)内のヘマトキシリンの言及

【ロッグウッド】より

…これを水で煮出して染料を抽出し,60℃以下で水分を蒸発させると,材の重量の約15%の黒褐色のエキスが得られる。このエキスの成分がヘマトキシリンhaematoxylinで,毛,絹,木綿,麻などを染める染剤に用いられる。ふつう鉄媒染によって黒色に染め上げるが,媒染剤を変えると紫や緑にも染められる。…

※「ヘマトキシリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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