朝日日本歴史人物事典 「松木新左衛門」の解説
松木新左衛門(5代)
生年:明暦2(1656)
江戸中期の駿府(静岡市)の豪商。町年寄。名は宗周。父は松木新左衛門宗今(新斎)。松木家は甲斐国(山梨県)の出身で永禄のころ(1558~70)駿府に移り,今川氏真から優遇された豪家。駿府では友野,大黒屋と並び町方の頭人で,のち町年寄筋目11軒中の1家。大御所として徳川家康が駿府に在城のころ,駿府の町方を代表して信頼を得,家康より長崎貿易による生糸の特権的配分を受ける。代々新左衛門を称したが,5代目宗周の時代が最盛期に当たり,町年寄として長崎の貨物市法の利益銀の駿府配分の特権を,町方助成として特許された。この新左衛門で特筆すべきことは,元禄11(1698)年紀伊国屋文左衛門と協力し,上野寛永寺根本中堂建立に際し,用材を請け負い,やや誇張はあろうが約10万両の巨利を得たといわれる。松木家は享保期以降衰退していく。<参考文献>『松木新左衛門始末聞書』(『静岡市史』近世史料3),『静岡市史』近世,中田易直『近世対外関係史の研究』
(中田易直)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報