松襲(読み)まつがさね

精選版 日本国語大辞典 「松襲」の意味・読み・例文・類語

まつ‐がさね【松襲】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. (かさね)の色目の名。表は萌黄(もえぎ)、裏は紫。一説に、表は青、裏は紫。また、女房装束の五衣(いつつぎぬ)の場合は、上の二つは蘇芳(すおう)の濃と淡と、次に萌黄、次に紅のひとえ。松の葉襲。〔満佐須計装束抄(1184)〕
    2. 浅黄の無垢(むく)をいう女房詞。〔東大本女中詞(旧黒川家蔵)(17C)〕
  2. [ 2 ] 一中節。栄思(三升屋二三治作詞。初世菅野序遊(河東節の三世山彦新次郎)作曲。文化三年(一八〇六)ごろ初演。松の名をかりて郭の全盛をうたった祝賀曲。この曲は、そのまま山田流箏曲に取り入れられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「松襲」の意味・わかりやすい解説

松襲
まつがさね

一中節の曲名。1806年(文化3)初世菅野序遊(すがのじょゆう)の作曲といわれる。松襲とは、襲装束(かさねしょうぞく)の色合いの種類のことで、公家(くげ)の装束をつくる山科(やましな)流では、表は萌黄(もえぎ)、裏は紫である。この曲では、松に関係のあることばや松の種類を歌詞に歌い込み、年月を経ても緑色の変わらぬ松のように御代が栄えることを祝している。廓(くるわ)気分を歌った箇所には、三下りの曲調を配している。

[茂手木潔子]

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