三升屋二三治(読み)みますやにそうじ

改訂新版 世界大百科事典 「三升屋二三治」の意味・わかりやすい解説

三升屋二三治 (みますやにそうじ)
生没年:1784-1856(天明4-安政3)

江戸末期の歌舞伎作者。通称伊勢屋宗三郎。江戸の生れ。1804年(文化1)ころ初世桜田治助に入門。30年(天保1)江戸市村座で立作者に進み,48年(嘉永1)引退。後世に残る歌舞伎狂言は少ないが,《道行浮塒鷗(うきねのともどり)》《道行旅路の花聟》《四季三葉草》など浄瑠璃長唄作詞が残っている。故実に詳しい古老として尊敬され,筆まめで《三升屋二三治戯場書留(ぎじようかきとめ)》《作者年中行事》など見聞や体験にもとづく多くの著作を残した功績は大きい。
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朝日日本歴史人物事典 「三升屋二三治」の解説

三升屋二三治

没年:安政3.8.5(1856.9.3)
生年天明4(1784)
江戸後期の歌舞伎狂言作者。江戸蔵前札差伊勢屋宗三郎,本姓青地。俳名和島,栄思,思声。文化1(1804)年家督を継いだが,7代目市川団十郎を贔屓にして劇界に出入りし,同9年には狂言作者として名を出したりした。同10年江戸三座の関係者を八百善で大盤振舞し,廃嫡されて同13年より作者となった。文政12(1829)年立作者となり,嘉永1(1848)年までで隠退。作者としては清元「道行旅路の花聟」や「〆能色相図」など,所作事作品が知られるが,劇界の故実にくわしく,『作者たなおろし』『作者年中行事』『三升屋二三治戯場書留』『賀久屋寿々免』などの随筆作者として名高い。<参考文献>関根只誠・関根正直『名人忌辰録』,『日本庶民文化史料集成』6巻

(安田文吉)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三升屋二三治」の意味・わかりやすい解説

三升屋二三治
みますやにそうじ

[生]天明4(1784)
[没]安政3(1856)
歌舞伎狂言作者,随筆家。江戸浅草蔵前の札差 (ふださし) 業伊勢屋の長男として生れ,若くして劇界に遊び,1世桜田治助の門弟と称した。文化 12 (1815) 年に廃嫡され,本格的に作者となる。天保年間 (30~44) に立作者となり,幕末の劇界で古老として重んじられたが,清元の『道行旅路の花聟 (はなむこ) 』 (通称『落人』) など豊後節の作詞に名を残すのみで,当り狂言はない。むしろ『作者店おろし』 (43) をはじめとする,江戸歌舞伎の作者,役者などに関する随筆の著者として有名である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三升屋二三治」の意味・わかりやすい解説

三升屋二三治
みますやにそうじ
(1785―1856)

江戸後期の歌舞伎(かぶき)作者。二三次とも。江戸・蔵前の札差(ふださし)伊勢屋(いせや)宗三郎の3代目であったが、7世市川団十郎をひいきし、初世桜田治助(じすけ)に入門するなどして、ついに廃嫡されて狂言作者となる。4世鶴屋南北(つるやなんぼく)の没後無人となった江戸の劇界で立(たて)作者を勤め、清元(きよもと)の『落人(おちうど)』などを書いたが、むしろその本領は歌舞伎関係の随筆にあり、『作者店(たな)おろし』『作者年中行事』『賀久屋寿々免(がくやすずめ)』を残す。

[古井戸秀夫]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「三升屋二三治」の解説

三升屋二三治 みますや-にそうじ

1784-1856 江戸時代後期の歌舞伎作者。
天明4年生まれ。江戸蔵前の札差。芝居好きで廃嫡され,狂言作者となった。浄瑠璃(じょうるり),長唄の作詞に佳作がおおい。晩年の随筆「三升屋二三治戯場書留」「作者店おろし」などは歌舞伎研究の資料として貴重。安政3年8月5日死去。73歳。姓は青地。通称は伊勢屋宗三郎(3代)。俳名は珉斎など。

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世界大百科事典(旧版)内の三升屋二三治の言及

【神田祭】より

…1839年(天保10)9月江戸河原崎座で,沢村訥升(とつしよう)(5世宗十郎),尾上栄三郎(4世菊五郎),市川海老蔵(7世団十郎)らにより初演。作詞三升屋二三治。作曲初世清元斎兵衛。…

【源氏十二段】より

…正名題は《源氏十二段 浄瑠璃供養》。恵井志(えいし)(三升屋二三治)作詞。1807年(文化4)8月開曲。…

【五郎】より

…演者は2世尾上多見蔵。作詞三升屋二三治。作曲10世杵屋(きねや)六左衛門。…

【作者年中行事】より

…歌舞伎作者の職掌などを記した書。三升屋二三治(みますやにそうじ)著。1848年(嘉永1)成立。…

【浄瑠璃供養】より

…1807年(文化4)8月,5世十寸見(ますみ)河東23回忌,6世河東13回忌追善として,柳橋河内屋半次郎方で初演。栄思(えいし)(三升屋二三治)作詞,7世河東と5世都一中が初めて語った。浄瑠璃の語源ともなった《浄瑠璃物語》(《十二段草子》ともいう)から,笛の段と忍の段を脚色したもの。…

【鳥羽絵】より

…1841年(天保12)江戸中村座初演の九変化舞踊《八重九重花姿絵(やえここのえはなのすがたえ)》の一曲。作詞三升屋二三治(にそうじ)。作曲10世杵屋六左衛門。…

【山姥】より

…現行の山姥物の様式が決定したのは,85年(天明5)初世瀬川如皐作詞,初世鳥羽屋里長作曲の常磐津《四天王大江山入》(古山姥)である。現在多く上演されるのは,俗に〈新山姥〉といわれる常磐津《薪荷雪間(たきぎおうゆきま)の市川》で,三升屋二三治(みますやにそうじ)作詞,5世岸沢式佐作曲,8世市川団十郎の山姥,4世坂東彦三郎の山樵,市川小団次の怪童丸により,1848年(嘉永1)江戸河原崎座初演。ほかに富本《母育雪間鶯》(三津五郎山姥),清元《月花茲友鳥(つきとはなここにともどり)》(山姥)などがある。…

【吉原雀】より

…1824年(文政7)江戸市村座初演。作詞三升屋二三治(みますやにそうじ)。作曲初世清元斎兵衛。…

※「三升屋二三治」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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