日本大百科全書(ニッポニカ) 「枝がわり」の意味・わかりやすい解説
枝がわり
えだがわり
芽条(がじょう)変異ともいい、体細胞の突然変異によって生じた分裂組織の細胞がもととなって分化し、母体と異なった形質をもつ器官を形成する現象をさす。枝がわりは自然下でも、また放射線などによって人工的にも得られる。枝がわりには主として染色体数に変異をおこすものと、遺伝子に変異をおこすものとがある。前者はリンゴ、ブドウ、ナシなどで知られているが、母体のもつ染色体数(2x)の倍をもつ四倍性(4x)枝がわりが多い。しかし、枝を発生的にみると、成長点に近い分裂組織のトゥニカtunica(外衣)を形成する1層、2層、3層とコルパスcorpus(内体)のすべてが変異する場合よりも、むしろ一部が変異して周縁キメラの枝がわりとなった場合が多い。リンゴのジャイアントローム(2x―2x―2x―4xキメラ)やジョナサンスポーツ(2x―2x―4xキメラ)などがその例である。遺伝子突然変異による枝がわりには、(1)枝、葉、花などの形のような形態的形質に関するもの、(2)葉、花、果実などの色、(3)果実の糖、酸度など成分、(4)早晩性など生理的形質に関するものがある。
リンゴの葉節間の詰まったスパータイプ、果実の着色性枝がわりとして貴ばれるふじ、温州(うんしゅう)ミカンやグレープフルーツなどの諸品種、バラ、カーネーション、キクなどの花の色変わり系統、サツマイモのいもの色の変異系などは枝がわりによるもので、育種上の効果は大きい。実際には変異部分を接木(つぎき)、挿木などして母体と分離し育成する。区分キメラや周縁キメラも、変異部を人工培養して純系とする道も開けてきた。
[飯塚宗夫]