分裂組織(読み)ブンレツソシキ

デジタル大辞泉 「分裂組織」の意味・読み・例文・類語

ぶんれつ‐そしき【分裂組織】

植物で、細胞分裂を活発に行っている組織。茎・根の形成層生長点にあり、植物を生長させる働きをもつ。⇔永久組織

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精選版 日本国語大辞典 「分裂組織」の意味・読み・例文・類語

ぶんれつ‐そしき【分裂組織】

  1. 〘 名詞 〙 植物の組織のうち、細胞分裂を活発に行ない新しい細胞を作りだす組織。⇔永久組織

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「分裂組織」の意味・わかりやすい解説

分裂組織
ぶんれつそしき

活発な細胞分裂によって新しい細胞を増殖し、しかもそれ自身はけっして特定の組織に分化しない組織をいう。分裂組織には、根端や茎頂にあって根や茎の伸長成長にかかわる頂端分裂組織と、形成層やコルク形成層のように太さの成長にかかわる側部分裂組織とがある。

 頂端分裂組織は、胚(はい)の幼芽幼根の分裂組織に由来し、さらに受精卵からその性質を引き継いでいるとみることができる。そのため、一次分裂組織とよばれることもある。茎頂分裂組織は茎の先端にあり、普通はドーム型で、多数の若い小さな葉に覆われている。その内部構造は、大きな分類群によって異なっている。被子植物では、表面の部分は外衣(がいい)とよばれる一ないし数層の細胞層からなり、その内部には内体(ないたい)とよばれる部分がある。多くのシダ植物では、茎頂分裂組織の表層中央に倒立した四面体状の頂端細胞があり、茎と葉のすべての部分はこの細胞に由来するという説もある。また、裸子植物では、被子植物のような明確な層状構造がみられず、また、シダ植物のような頂端細胞もない。茎頂分裂組織は内部で新しい細胞をつくるばかりでなく、外に向かって葉、枝、花などの器官の「もと」、すなわち原基を形成する。これらの原基は、茎頂分裂組織の側面に突起として生じ、それぞれの器官へと発達する。根端分裂組織は根の先端部に位置しているが、さらにその先端には根冠がある。根冠は、根が地中を伸長するときに、分裂組織が傷害を受けないように保護する組織である。根端は、茎頂のように葉などの側生器官を形成しないため、多くの場合、内部構造は整然としており、表皮、皮層、維管束などの分化した組織と、分裂組織との由来関係がわかりやすい場合も多い。なお、シダ植物では、根端分裂組織にも四面体状の頂端細胞がある。

 側部分裂組織である形成層は、裸子植物の大部分と双子葉植物の樹木の茎や根の木部と篩部(しぶ)との間に位置し、横断面では環状の分裂組織である。形成層は、紡錘形始原細胞と放射組織始原細胞からなり、前者は両端がとがった縦に細長い細胞で、接線面の分裂により、外側につくられた細胞は二次篩部に、内側の細胞は二次木部に分化する。このように、形成層によって毎年新しい木部と篩部がつくられるため、茎は年ごとに肥大成長していく。また、後者は二次篩部と二次木部内を放射方向に走る放射組織をつくる。形成層は、維管束内形成層と維管束間形成層からなっている。前者は一次維管束の木部と篩部との間に生じたもので、後者は維管束と維管束の間の柔組織内に新しく生じたものである。両者は互いにつながって環状の形成層となる。形成層の働きで茎や根が肥大すると、表面を保護している表皮は裂けたり、はがれたりする。コルク形成層は、このような表皮にかわって、茎の保護をするコルク組織をつくる分裂組織である。しかし、茎の肥大が進むと、さらに内方に分化する新しいコルク形成層と交代することがある。コルク形成層は、茎では皮層の細胞、根では内鞘(ないしょう)に由来するため、二次分裂組織ともよばれる。なお、形成層の場合、維管束間形成層は二次分裂組織と考えられるが、維管束内形成層は、一次維管束に分化する前形成層から直接由来するという見解も出されている。しかし、形成層がつくる木部や篩部は二次組織である。

[相馬研吾]


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改訂新版 世界大百科事典 「分裂組織」の意味・わかりやすい解説

分裂組織 (ぶんれつそしき)
meristem

植物体において新しい細胞を生産する組織。高等な植物では胚がつくられるまでは体の全体の細胞が細胞分裂をさかんに行う若い細胞から成り立っているが,胚が完成すると胚の軸の両端に細胞分裂をさらに活発に続けていく頂端分裂組織が,それから先の植物体の部分をつくり出す組織として残る。すなわち茎頂の頂端分裂組織と根端の頂端分裂組織である。茎,根ともに側軸,すなわち側枝,側根がつくられるときにはその先端には必ず頂端分裂組織が分化して側軸を構成する細胞の生産を行う。不定芽,不定根の場合にも頂端分裂組織がまず分化する。

 頂端分裂組織はおもに植物体の軸方向への細胞の生産を行うが,一方,軸と直角の方向すなわち植物の肥大に関与する分裂組織は側部分裂組織とよばれ,形成層(維管束形成層ともいう)とコルク形成層がある。形成層は頂端分裂組織に由来する細胞からつくられる一次維管束の木部と師部とのあいだに分化をはじめ,結局は茎の中でリング状の形成層となり,その内側に二次木部(材)を,そして外側に二次師部をつくる。コルク形成層は形成層の活動による茎の肥大に伴って,保護の機能を失った表皮に代わって,樹木の外側の保護の役割をもつコルク組織をその外側につくる分裂組織である。表皮のつぎの層の細胞がコルク形成層の細胞に分化することが多いが,必ずしもその位置は一定ではない。

 分裂組織には一般にその分裂組織が活動している限りは永続的に分裂能力を保って始原細胞としての機能を継承していく細胞と,その後何回かは分裂するがやがて分裂能力を失っていく派生細胞とがある。とくに頂端分裂組織には後者の細胞からなる部分として,表皮系に分化する前表皮,維管束系に分化する前形成層,基本組織に分化する基本分裂組織の三つがふつう区別される。分裂組織は植物に特有の組織で,形態形成の中心となる組織である。
肥大生長
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「分裂組織」の意味・わかりやすい解説

分裂組織
ぶんれつそしき
meristem

植物で分裂能力を残し続けて,生長の原因になっている組織。すなわち茎や根の先端近くにあるものや,維管束内にあって新たな木部と師部を送出し続ける形成層がこれにあたる。分裂組織の細胞は細胞壁が薄く,液胞は発達していない。これに対して分裂を停止した細胞から成る組織を永久組織という。ただし永久組織が分裂能を回復して,二次形成層を生じたりする例も多い。また生殖細胞も分裂能力を保持し続けるが,組織というべきまとまりは示しておらず,普通,分裂組織というときにはこれは含まない。

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世界大百科事典(旧版)内の分裂組織の言及

【組織】より

…これらの形態的分類に対し,ハーバーラントG.Haberlandtは生理的機能に注目して,皮層組織,機械組織,吸収組織,同化組織,通道組織,貯蔵組織,通気組織,分泌組織,運動組織,感覚組織,刺激伝達組織の11の系を識別した。 植物では,茎頂,根端,形成層など,つねに活発に細胞分裂を行う分裂組織と,すでに分裂能を失った永久組織とがある。永久組織のうちでは,柔組織や厚角組織,厚壁組織(繊維組織を含む)などが典型的なもので,種子植物の葉の柔組織に柵状組織と海綿状組織の分化がみられるなど,形態的にも機能的にも多様な組織の分化がみられる。…

※「分裂組織」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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