中国、浙江(せっこう)省南東部の地級市。東シナ海に面する温州湾の奥、甌江(おうこう)の河口に位置する。人口813万7000(2014)。4市轄区、5県を管轄し、2県級市の管轄代行を行う(2016年時点)。漢代の初めは東甌(とうおう)国の地で、のちに永嘉(えいか)郡とよばれ、後漢(ごかん)には永寧(えいねい)県が置かれ、隋(ずい)代に永嘉と改名された。唐代には温州の、宋(そう)代は瑞安(ずいあん)府の、明(みん)・清(しん)代は温州府の治所であった。1949年永嘉県から分離して温州市が設置された。
1876年芝罘(チーフ)条約により開港されたが、それ以前にも浙江産の茶の独占輸出港として一時繁栄した。いまは沿岸航路汽船の起点であるが、民船はさらに甌江をさかのぼり、北西約100キロメートルの麗水(れいすい)市まで達している。浙江省南東部における木材、茶、アサ、柑橘(かんきつ)類、ブタなどの集散地となっている。
手工業が発達し、「甌塑(おうそ)」「甌綉(おうしゅう)」の名の磁器と織布が有名である。改革開放以降、同市の靴、アパレル産業が勃興し、民営企業が著しい発展を遂げた。1984年には沿海対外開放14都市の一つに指定されている。温福線(温州―福州(ふくしゅう))の起点、甬台温(ようだいおん)線(寧波(ニンポー)―台州(だいしゅう)―温州)、金温線(金華(きんか)―温州)、金麗温線(金華―麗水―温州)の終点。なお金温線は、中国本土と香港(ホンコン)の共同出資で建設された国内初の鉄道である。温州湾岸には温州竜湾国際空港がある。北雁蕩山(ほくがんとうさん)、江心嶼(こうしんしょ)など、名勝・奇勝が多い。
[林 和生・編集部 2017年4月18日]
中国,浙江省南東部にある市。人口192万(2000)。省直轄市で,海岸より甌江(おうこう)を20km余さかのぼった南岸にある港湾都市。付近の農産の集積地で,海路で上海・広州などと結ばれるほか,機械工業,工芸生産の基地でもある。ミカン,水牛,生糸,塑像,木彫などが特産品として有名。後漢の時,永寧県が置かれ,その後永嘉と改められ,晋の永嘉郡,唐の温州の治所として中国東南海岸で有数の都市であった。1876年(光緒2)の芝罘(チーフー)条約で開港されたが,位置的地形的条件から近代都市としての発達は遅れた。南宋末,宋王室がこの付近へ避難したところから,文天祥祠,江心寺など,関係する遺跡がある。
執筆者:秋山 元秀
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