改訂新版 世界大百科事典 「楽学軌範」の意味・わかりやすい解説
楽学軌範 (がくがくきはん)
朝鮮,李朝の音楽書。1493年(成宗24)8月,当時,礼曹判書でとくに音律に明るかった成俔(せいけん)が中心となり,主簿の申末平,典楽の朴・金福根などが勅命を受けて,掌楽院にあった各種の儀軌と楽譜を整理し,編纂した楽書。全9巻3冊。このときの版は豊臣秀吉の文禄の役(壬辰倭乱,1592)の際散逸したが,日本の蓬左文庫に唯一現存する。成宗以後,何回か復刻され,1610年(光海君2)版,1655年(孝宗6)版,1743年(英祖19)版があったが,わずかに数本を残す。1933年,当時の京城帝国大学蔵本による影印複製本として縮刷版が出た。本文は漢文を主とし,ハングルの注がある。巻一は音律論,巻二は雅楽制度,巻三~五は各楽曲と舞楽の楽譜と解説,巻六~七は雅楽器の構造と調律と奏法,巻八~九は呈才(チヨンジン)(舞楽)の用具と衣装などの解説。高麗歌謡と百済歌謡などの記録もあり,編集の動機と目的についての詳細な序文は意義がある。
執筆者:草野 妙子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報