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唐楽 とうがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

唐楽
とうがく

日本の雅楽の中心となる一部門。奈良時代から平安時代初期にかけて,唐代の中国から伝来した合奏音楽で,唐朝の宮廷の娯楽音楽を中心とするが,このほか,中国を経て伝来したインドやベトナムの音楽,それらをまねて日本人が作曲した音楽が含まれる。伝来当初から寺院の供養音楽として,あるいは宮廷の儀式音楽として演奏され,さらに平安時代中期 (仁明天皇の頃) には,いわゆる平安朝の楽制改革によって,楽器編成や音楽理論,演奏様式などの統一がはかられ,朝鮮系の高麗 (こま) 楽に対する唐楽として形が整えられ,今日にいたっている。現行の唐楽は七十数曲を数えるが,演奏様式からは (1) 管弦専用の曲 (楽器だけによる演奏) 。 (2) 舞楽専用の曲 (舞と楽器による演奏) 。 (3) 管弦,舞楽両用の曲の3種に分類できる。楽器は,管弦には,管楽器の篳篥 (ひちりき) ,竜笛 (りゅうてき) ,笙,弦楽器の箏,琵琶,打楽器の太鼓,鉦鼓,羯鼓 (かっこ) を用い,個々の楽器の特徴を生かして,ゆるやかなテンポで優美に演奏される。また舞楽では弦楽器を用いず,管,打楽器によって,拍節を明確に,テンポも比較的早く演奏される。唐楽曲は壱越 (いちこつ) 調,平調 (ひょうぢょう) ,双調 (そうぢょう) ,黄鐘 (おうしき) 調,盤渉 (ばんしき) 調,太食 (たいしき) 調という6種の音階 (六調子) のいずれかによって成り立っており,またリズムに関しては序拍子,早四拍子,早八拍子,延四拍子,延八拍子,早只四拍子,夜多羅八拍子などのいずれかによって構成される。

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デジタル大辞泉の解説

とう‐がく〔タウ‐〕【唐楽】

中国代の音楽、およびその朝鮮半島・日本に伝来したもの。
雅楽の分類の一。平安初期の楽制改革で、日本に伝来した1林邑楽(りんゆうがく)とを合わせて成立。器楽合奏のみの管絃と舞を伴う舞楽とがある。左楽(さがく)。→高麗楽(こまがく)
歌舞伎下座音楽の一。中国を舞台にした場面や神仏の出現などに演奏される囃子(はやし)能管・大小鼓・太鼓などを用い、異国情緒や荘重な感じを出す。

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百科事典マイペディアの解説

唐楽【とうがく】

雅楽の一種別。大陸から伝来したもののうち,中国および林邑(りんゆう)系統の音楽,およびそのスタイルにならって日本で新作したものの総称。高麗(こま)楽の対。雅楽の中でも,最も中心的な存在である。
→関連項目アジェン(牙箏)越殿楽羯鼓管弦古楽五常楽春鶯囀青海波(音楽)千秋楽想夫恋長慶子陪臚抜頭ヒャンアク(郷楽)ピリ舞楽ヘグム(奚琴)竜笛

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世界大百科事典 第2版の解説

とうがく【唐楽】

雅楽の主要種目名。奈良時代に日本に伝来した中国系統の楽舞高麗楽(こまがく)に対する。伝来当初は唐朝の芸術音楽を指したが,平安中期ころに日本の宮廷文化としての変容をとげ,原義を拡大解釈した種目名として定着した。5世紀から9世紀ころにかけて日本に相次いで伝来した東アジア諸国の楽舞は,新羅楽,百済楽,高句麗楽,唐楽,林邑楽(りんゆうがく),度羅楽(とらがく),渤海楽(ぼつかいがく)(以上伝来順)などで,並列的に受容されていた。

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大辞林 第三版の解説

とうがく【唐楽】

左方さほう唐楽 」に同じ。
歌舞伎で、神仏の出現や中国風の異国情緒を表す時に用いられる囃子。
古代日本に唐から伝来した楽舞。九世紀以後は林邑りんゆう楽をも合わせて左方さほう唐楽と総称された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

唐楽
とうがく

雅楽の主要種目名。元来は中国唐代の音楽をさしたが、平安時代の楽制改革(9世紀中ごろ)によってベトナムの林邑楽(りんゆうがく)や日本人の新作なども含めて中国系の雅楽を唐楽とした。これに対し、朝鮮系の雅楽を高麗楽(こまがく)と称する。唐楽は左方(さほう)の楽、高麗楽は右方(うほう)の楽ともよばれ、両者は楽器編成、舞作法、音楽理論、装束などすべてにわたって好対照をなしている。
 唐楽には、舞と楽器合奏による「舞楽」と、楽器合奏のみの「管絃(かんげん)」の二形態あり、舞楽では篳篥(ひちりき)・竜笛(りゅうてき)・笙(しょう)・鞨鼓(かっこ)・鉦鼓(しょうこ)・太鼓が用いられ、管絃ではこのほか楽箏(がくそう)・楽琵琶(がくびわ)が加えられる。合奏の主導には鞨鼓があたり、篳篥と竜笛が主旋律を受け持つ。現行曲は八十数曲で、曲によって舞楽・管絃両用のもの、どちらか専用のものがある。
 なお、歌舞伎囃子(かぶきばやし)にも唐楽という楽曲があるが、これは神仏の出現や中国風の異国情緒を表すのに用いられるもので、雅楽の唐楽を模したものではない。また、朝鮮の音楽で中国起源の音楽を唐楽と称することもある。[柴田典子]

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世界大百科事典内の唐楽の言及

【右舞】より

…一般には仁明朝の〈楽制改革〉と称されているが,この左右両部制の成立によって,今日に至る舞楽伝承の基礎が完成された。左舞は唐楽を伴奏とし,右舞は高麗(こま)楽を伴奏とするが,例外については後述する。舞台芸術としての舞楽の演出には左右の対比とバランスが重視されており,王朝の美学の反映がうかがえる。…

【雅楽】より


【朝鮮の雅楽】
 狭義には中国の雅楽を受け継ぎ古制を備える文廟(孔子廟)の祭礼楽をいい,広義には李王家に伝わった宮廷音楽をさす。つまり,文廟の祭礼楽のほかに,唐楽(中国伝来の音楽),郷楽(朝鮮固有の音楽)を含めて,民俗楽に対するものとして正楽と称し,これを雅楽ということもある。これらは現在,韓国国立国楽院に継承されている。…

【高麗楽】より

…日本に定着した朝鮮系統の楽舞で,雅楽の主要種目の一つ。通常は唐楽に対する語として用い,狛楽とも記す。元来は古代の日本に伝来した大陸系諸楽舞のうち,高句麗からのものを高麗楽と称した。…

【朝鮮音楽】より

…(4)高麗時代 新羅の音楽をそのまま受け継ぎ,古来の儀式八関会(はちかんえ)も,仏事である燃灯会も宮中の行事とした。12世紀になると,中国の宋から大晟(たいせい)雅楽と大量の唐楽器と雅楽器が贈られた。さらに宋代の詞楽も伝えられ,中国から入った音楽は,前代からのものと合わせて唐楽と呼んだ。…

【篳篥∥觱篥】より

…これは竹製の管に竹製の舌をつけて演奏する。現在では,唐楽系の音楽には唐觱篥,弦楽器中心の室内楽や歌曲には繊細な音の細觱篥,民俗音楽には大觱篥とも呼ばれる郷觱篥を,用途によって使い分けている。いずれも8孔の竹製で,日本の篳篥のような樺巻はない。…

【舞楽】より

…このような外来楽舞の全盛期は,おそらく752年(天平勝宝4)の東大寺大仏開眼供養あたりであったろう。9世紀初頭までに伝わった外来楽舞としては,唐楽,高麗楽,百済楽,新羅楽,度羅楽(とらがく),林邑楽(りんゆうがく),呉の伎楽などが知られ,このほか渤海楽(ぼつかいがく)の記事もある。 9世紀の半ばごろから,これら外来音楽の内容を取捨整備し,あわせて日本人の好みに合った音楽へ改変する,いわば外来音楽の国風化の気運が高まった。…

【舞楽装束】より

…頭装は,精好紗に黒漆をかけ下部を白布で縁どりした〈揉立烏帽子(もみたてえぼし)〉で,履物はふつう牛革を黒漆で塗り固めた浅い形の〈烏皮沓(うひぐつ∥くりかわくつ)〉を用いる。
[舞楽装束]
 唐楽(とうがく),高麗楽(こまがく)等,外国から伝承した舞楽に用いる装束の総称で,襲(かさね)装束(別名唐(とう)装束,常(つね)装束とも),蛮絵(ばんえ)装束,別装束,童(わらべ∥わらわ)装束の4種があり,それぞれに左方(さほう)(唐楽系),右方(うほう)(高麗楽系)の別があって,左方はおもに赤系統の色,右方は青・緑系統の色のものが多い。(1)襲装束 中国唐代の遺制と思われるもので,舞楽の大半はこの装束を使用している。…

※「唐楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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