知恵蔵 「欧州議会議員選挙」の解説
欧州議会議員選挙
EUの政治的な方向性を決めるのは、加盟国の大統領や首相らによるEU首脳会議だが、法律や予算の原案は、行政機関である欧州委員会が作成する。欧州議会は、欧州委員会から提出された法案を、加盟国の閣僚で構成されるEU理事会と共同で審議し、採択する。欧州議会は、もともとはEUの立法手続きで諮問的な役割を担っていたが、1993年以降、EUの基本条約が改正されるたびに、立法機関としての権限が強化されていった。また、加盟国の首脳による会議で決まる欧州委員会の委員長候補について、多数決で承認、否認ができる。2019年6月現在、定数は751で、人口比などで各加盟国に議席数が割り振られる。最多はドイツの96で、続くフランスは74、最少はエストニア、キプロス、マルタ、ルクセンブルクの6。最低25人、議員の出身国は加盟国の4分の1に当たる7カ国以上という要件を満たせば会派をつくることができ、現在は8会派ある。
欧州議会選挙法で規定されているのは、比例代表制や秘密投票など選挙の大まかな枠組みのみで、各加盟国は、それぞれが定める有権者資格や投票方法などの細則にのっとって選挙を実施する。19年の選挙は、5月23日から26日まで、英国を含む加盟28カ国で行われた。欧州に来る移民や難民の受け入れ、EUの在り方などが争点となったほか、英国がEU離脱を決定したこともあり、1979年以降、40年にわたって2大政治会派として過半数を占め、慣例として議長などを交替で務めてきた中道右派「欧州人民党(EPP)」と中道左派「社会民主進歩同盟(S&D)」が、合わせて過半数を獲得できるかどうかが注目されていた。
2019年の選挙では、平均投票率は50.95%(2014年は42.61%)と大幅に上昇し、過去25年で最高だった。欧州議会の公式サイトに掲載されている選挙結果などによると、EPPとS&Dはそれぞれ大幅に議席を減らし、総議席数で過半数を割った。しかし、これらの党と同じくEUを支持するリベラル会派の「欧州自由民主同盟(ALDE)」と環境政党の「緑の党・欧州自由連合(Greens/EFA)」が議席を伸ばしたため、親EU派としては、議席の3分の2を占めることとなった。その一方で、EUに懐疑的な「自由と直接民主主義の欧州(EFDD)」と「国家と自由の欧州(ENF)」は躍進したが、「欧州保守改革グループ(ECR)」は議席を減らし、3党の議席を合わせても過半数に届かなかった。新議員は7月2日に就任する。
(南 文枝 ライター/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報