(読み)しょう(英語表記)Shè

普及版 字通 「歙」の読み・字形・画数・意味


16画

[字音] キュウ(キフ)・ショウセフ)・キョウ(ケフ)
[字訓] すう・おさめる・あう

[説文解字]

[字形] 形声
声符は翕(きゅう)。翕は鳥が集まって群飛する意。集まり、収まる意がある。〔説文〕八下に「を縮(ちぢ)むるなり」とし、気息を引きおさめる意。気の集散のさまについて、その集まるを歙然、専一なるさまを歙歙という。翕の声義を承け、(吸)・と声義が通ずる。

[訓義]
1. いきをすう、息を吸い収める。
2. あつめる、あわせる、おさめる。
3. あう。
4. (ちょう)と通じ、おそれる。
5. 脅(きょう)と通じ、そびやかす。

[語系]
歙・)・翕xipは同声。呷xeapは声義近く、〔説文〕二上に「呷は呷なり」とあって、波の吐するような状態をいう。漢・司馬相如の〔子虚の賦〕に「翕呷(すいさい)」とあり、はもののふれあうような音をいう。

[熟語]
・歙歙肩歙集・歙然歙張歙鉢・歙歙歙硯歙石
[下接語]

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「歙」の意味・わかりやすい解説

歙 (しょう)
Shè

中国の現在の安徽省歙県一帯の地をいう。古く春秋時代から知られ,秦代には鄣郡に,漢代には丹陽郡に属した。隋代に歙州が置かれ,唐代に一時新安郡と改められたが,宋代には徽州となった。明・清時代には徽州府に昇格,府治を歙県に置き,休寧,婺源(むげん),祁門きもん),夥(か),績渓の各県を統轄した。江蘇浙江,江西に通ずる要地で,境内に〈天下の名景は黄山に集まる〉といわれる黄山があり,奇岩と雲海に代表される景観は,画家たちの興味を引きつけてやまない。有名な歙硯(しようけん)は婺源県の歙渓から産する硯石で,南唐のころから世に聞こえ,端渓硯よりはやくから知られていたが,宋代には佳石がなくなったという。日本では誤り伝えて〈きゅうけん〉,歙州硯(きゆうじゆうけん)と呼ぶことが多い。また,南唐のころ,この地の墨匠李廷珪らが名墨をつくり,国宝として珍重されたが,徽墨名声は現在まで,国の内外に喧伝されている。この地はまた,明・清時代の商業界に君臨した新安商人の故郷であるが,歙,休寧の両県からとくに大商人を輩出した。
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