普及版 字通
「歙」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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歙 (しょう)
Shè
中国の現在の安徽省歙県一帯の地をいう。古く春秋時代から知られ,秦代には鄣郡に,漢代には丹陽郡に属した。隋代に歙州が置かれ,唐代に一時新安郡と改められたが,宋代には徽州となった。明・清時代には徽州府に昇格,府治を歙県に置き,休寧,婺源(むげん),祁門(きもん),夥(か),績渓の各県を統轄した。江蘇,浙江,江西に通ずる要地で,境内に〈天下の名景は黄山に集まる〉といわれる黄山があり,奇岩と雲海に代表される景観は,画家たちの興味を引きつけてやまない。有名な歙硯(しようけん)は婺源県の歙渓から産する硯石で,南唐のころから世に聞こえ,端渓硯よりはやくから知られていたが,宋代には佳石がなくなったという。日本では誤り伝えて〈きゅうけん〉,歙州硯(きゆうじゆうけん)と呼ぶことが多い。また,南唐のころ,この地の墨匠李廷珪らが名墨をつくり,国宝として珍重されたが,徽墨の名声は現在まで,国の内外に喧伝されている。この地はまた,明・清時代の商業界に君臨した新安商人の故郷であるが,歙,休寧の両県からとくに大商人を輩出した。
執筆者:寺田 隆信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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