比較社会学(読み)ひかくしゃかいがく(その他表記)comparative sociology

日本大百科全書(ニッポニカ) 「比較社会学」の意味・わかりやすい解説

比較社会学
ひかくしゃかいがく
comparative sociology

時間的、空間的に異なる社会もしくは集団や制度を対象として、その構造や機能がどのような事情において一致ないし相違しているかを分析する社会科学の一分野。このような比較、すなわち類似と差異の検討を通じて初めて人間社会の共通性や個別性も明らかとなり、さらにこれを生み出しあるいは変化させる条件も把握でき、その結果、理論的な普遍化も可能となる、という立場をとる。一般には、比較社会論とか比較文明論、また比較社会体系論ないし比較体制論ともいわれている。比較体制論は、政治、経済、社会、福祉、教育からなる複合的な社会体系が比較検討される。たとえば、資本主義体制対社会主義体制といった「東西問題」の比較、先進国社会対発展途上国社会といった「南北問題」の比較は、このマクロ・レベルでの比較である。また全体社会体系を構成する下位体系をそれぞれ分離して、比較経済体系論、比較政治体系論、比較社会体系論などの形で比較分析することも可能である。アメリカの経済学者ボールディングが、社会体系の下位体系として、脅迫体系(政治体系)、交換体系(経済体系)、統合体系(社会体系)の三つをあげるのは、このことを意味する。古典的研究には、モンテスキュー、A・コント、J・S・ミル、E・デュルケーム、M・ウェーバー、L・T・ホッブハウス、A・R・ラドクリフ・ブラウンらの業績がある。

 比較社会学の研究領域としては、〔1〕異なる社会の行動様式、〔2〕文化、パーソナリティー、民族的性格、政治の類型、〔3〕暴力と社会、〔4〕宗教と資本主義の関係、〔5〕経済成長と社会的諸条件、〔6〕人種闘争、〔7〕全体主義の社会的影響、〔8〕全体社会の分析など、多方面にわたっている。また方法論的には、定性比較から定量比較へ、全体比較から部分比較へ、遠隔比較から近接比較へ、静態的な構造比較から動態的な時系列比較へ、といった多面的な研究方向が推進されつつある。

[高島昌二]

『F・L・K・シュー著、作田啓一・浜口恵俊訳『比較文明社会論』(1971・培風館)』『R. M. MarshComparative Sociology (1967, Harcourt, Brace & World)』『S. AndreskiThe Uses of Comparative Sociology (1965, University of California Press)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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