気候変動がもたらすビジネス上のリスクとチャンスを適切に表す環境関連財務情報の開示と、これに基づく金融市場での的確な投資判断により、低炭素型経済へのスムーズな移行を促す国際プロジェクトチーム。英語の頭文字をとって、TCFDと略称する。気候変動が経済活動に重大な影響を及ぼすとの前提にたち、企業等に気候変動に関する情報の開示を推奨し、投資家には財務情報への気候変動の影響を適切に評価するよう求めている。2015年のアンタルヤ・サミット(G20財務相・中央銀行総裁会議)の要請を受け、同年、世界各国の中央銀行や金融監督当局が参加する金融安定理事会(FSB、本部スイス)の特別委員会として設置された。主要国の銀行、保険会社、年金基金などの金融機関のほか、エネルギー、運輸などの企業の専門家で構成される民間主導の組織である。2017年に、企業に対し気候変動が財務に与える影響を分析・開示するよう提言。気候変動に伴うリスクやビジネスチャンスを検討する取締役会などの「ガバナンス」、短・中・長期にわたって分析・評価するプロセスを示す「戦略」、リスクをどう特定・評価しているかを示す「リスク管理」、用いる指標や目標などの「指標と目標」の4項目について開示を推奨。具体的には、異常気象による収益減少、原材料コストの上昇などのリスクのほか、脱炭素関連サービスへの進出などビジネスチャンスについても開示するよう求めている。
TCFD提言に賛同する世界の企業、団体、機関数は2023年(令和5)3月時点で4344に達し、日本では1252に上る。TCFD提言に基づき、企業の情報開示を義務化する動きがフランス、イギリス、シンガポールなど各国に広がっており、トランプ政権下で開示に消極的だったアメリカ証券取引委員会(SEC)も義務化に転じた。日本では東京証券取引所が2022年、プライム市場の上場企業に開示を義務化した。
なお、類似機関に、国連環境計画などの発案で生まれた自然関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)があり、TCFDと連携し気候変動問題と生物多様性損失問題の同時解決を目ざしている。
[矢野 武 2023年6月19日]
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