水俣(市)(読み)みなまた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水俣(市)」の意味・わかりやすい解説

水俣(市)
みなまた

熊本県南部、八代海(やつしろかい)に臨む工業都市。1949年(昭和24)市制施行。1956年久木野(くぎの)村を編入。肥薩(ひさつ)おれんじ鉄道、国道3号、268号が通じ、JR九州新幹線の新水俣駅がある。名を『延喜式(えんぎしき)』にもみられる古い宿駅「みなまた」によったこの市域は、水俣川河口の沖積地を除けば、ほぼ全域が九州山地南部に属する洪積世前期火山岩からなる山地である。このため、1908年(明治41)日本窒素肥料株式会社のカーバイド工場(現、チッソ水俣工場)が立地するまでは、海岸部では漁業、山間部では林業に依存し、湯治場的性格を有する湯の児温泉(ゆのこおんせん)・湯の鶴温泉を抱えた寒村にすぎなかった。工場の発展は鉄道の敷設を早め、さらに20余社にも及ぶ関連工場を誘致させ、市税の過半近くをこれらの工場群に依存する工都に導いた。しかし、製造過程の副産物であるメチル水銀を含んだ工場排水を海域へ無処理のまま放流、それが原因で発生したメチル水銀中毒(いわゆる水俣病)は、地域住民・社会に衝撃と不安を与え、企業と地域社会とにかかわる困難な問題を提起した。他方、過度の企業依存から生じた地域社会の沈滞は、海岸山地における甘夏・ミカンの造園化、内陸山地における茶園拡大、さらに周遊道路の建設、公園などの整備によって克服されつつある。徳富蘇峰(そほう)・徳冨蘆花(とくとみろか)の出身地で、陣内にゆかりの蘇峰記念館(旧、淇水(きすい)文庫)がある。面積163.29平方キロメートル、人口2万3557(2020)。

[山口守人]

『『水俣市史』(1966・水俣市)』


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