改訂新版 世界大百科事典 の解説
水素化アルミニウムリチウム (すいそかアルミニウムリチウム)
lithium aluminium hydride
化学式LiAlH4。正しくはテトラヒドリドアルミン酸リチウムという。白色結晶性固体。エーテル中で水素化リチウムLiHと塩化アルミニウムAlCl3とを反応させるか,リチウムとアルミニウムと水素とを140℃高圧下で反応させるかして合成する。単斜晶系結晶。アルミニウム原子のまわりに4個の水素原子がほとんど正四面体に配位してAlH4⁻をつくっている。比重0.92。乾燥空気中常温では安定であるが,100℃で分解する。きわめて潮解性で,また水と激しく反応し水素ガスを発生する。
LiAlH4+4H2O─→LiOH+Al(OH)3+4H2
この際発熱のため発火する。単に空気中ですり砕いても発火するので危険物として取扱いに注意が必要である。発火したときは石灰石粉末を上からかけるとよい。水,二酸化炭素の化学消火剤を用いてはならない。溶解度30g/100gエーテル,13g/100gテトラヒドロフラン,1g/100gジオキサン。エーテル溶液は湿気を防げば室温で数ヵ月安定。アルデヒド,ケトン,エステル,酸塩化物をアルコールに,ニトリルをアミンに,芳香族ニトロ化合物をアゾ化合物に,それぞれ還元する。有機合成における還元剤として広く用いられる。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報