アゾ化合物(読み)あぞかごうぶつ(英語表記)azo compound

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アゾ化合物」の意味・わかりやすい解説

アゾ化合物
あぞかごうぶつ
azo compound

アゾ基-N=N-をもつ有機化合物R-N=N-R'をいう。RおよびR'は炭化水素基で、脂肪族、芳香族のいずれでもよい。アゾ基が優れた発色団であるため黄色、橙(だいだい)色、赤色をしている。アゾ基のC-N=N結合角が約120度であるため、トランス形とシス形の幾何異性体が可能である。アゾベンゼンC6H5N=NC6H5のようにトランス形化合物に光をあてるとシス形化合物の得られることもあるが、シス形化合物は不安定である。アゾメタンのように常温気体のもの、アゾエタンのように液体のものもあるが、ほとんどは固体である。

[谷利陸平]

脂肪族アゾ化合物

ヒドラゾ化合物R-NH-NH-R'(R、R'はアルキル基)の酸化により合成するが不安定な化合物が多く、熱、光により分解し、遊離基(フリーラジカル)R・を生成する。2,2'-アゾビスイソブチロニトリルR=R'=(CH3)2(CN)C-は遊離基反応開始剤として重合反応などに用いられる。


[谷利陸平]

芳香族アゾ化合物

色をもっているのでアゾ色素ともよばれる。脂肪族アゾ化合物とは対照的に安定である。対称アゾ化合物R=R'はニトロ化合物亜鉛と水酸化ナトリウムで還元すると得られるが、非対称アゾ化合物R≠R'はニトロソ化合物アミンとの反応で合成する。


 アゾ染料原料となるヒドロキシ基-OHをもつオキシアゾ化合物やアミノ基-NH2をもつアミノアゾ化合物は、ジアゾニウム塩フェノールアニリンとの反応(ジアゾカップリング)により容易に合成することができる。

 アルカリ性条件で還元するとヒドラゾ化合物になり、酸性条件下ではアニリンまで還元される。過酸化水素、過酸などと反応させると、アゾ基が酸化され、アゾキシ基をもつアゾキシ化合物が得られる。ヒドロキシ基、アミノ基、スルホン酸基-SO2OHなどをもつ芳香族アゾ化合物は、合成染料としてもっとも重要なアゾ染料となる。アゾ化合物は有害なものが多く、発がん性を示すものもある。

[谷利陸平]

『高橋浩著『構造式と化学名』(1996・三共出版)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アゾ化合物」の意味・わかりやすい解説

アゾ化合物
アゾかごうぶつ
azo compound

2個の炭化水素基がアゾ基 -N=N- に結合した形の化合物 R-N=N-R' の総称。R とR ' が同じとき,たとえば C6H5 のとき,アゾベンゼンといい,R とR ' が異なるとき,たとえばR が C6H5 ,R ' が CH3 のとき,ベンゼンアゾメタンという。芳香族ニトロ化合物をアルカリ性溶液中,亜鉛粉末で穏やかに還元すると前者の形の化合物が生じ,ジアゾニウム塩をカップリングさせると後者の形の化合物が生成する。アゾ基をもつ化合物は強く着色するので,アゾ染料などとして利用される。

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