日本大百科全書(ニッポニカ) 「水酸化クロム」の意味・わかりやすい解説
水酸化クロム
すいさんかくろむ
chromium hydroxide
クロムの水酸化物であるが、二価および三価クロムの化合物が知られている。
(1)水酸化クロム(Ⅱ) 化学式Cr(OH)2、式量86.2。空気を断ったクロム(Ⅱ)塩水溶液にアルカリを加えて得られる黄色沈殿。水素を通じながら硫酸上で乾燥すると褐色粉末となる。水および希酸に不溶。強い還元剤である。
(2)水酸化クロム(Ⅲ) 化学式Cr(OH)3、式量103.03となるが、実際にはこの組成のものを得るのは困難で、クロム(Ⅲ)塩水溶液にアルカリを加えて中性にし、加水分解させると、灰緑色の酸化クロム(Ⅲ)水和物CrO3・nH2Oの沈殿を生じ、これを一般に水酸化クロム(Ⅲ)とよんでいる。水に不溶。生成したばかりのものは酸に易溶であるが、長時間放置すると溶けにくくなる。水酸化アルカリには溶ける両性物質。(1)、(2)とも空気中で熱すれば脱水されて酸化クロム(Ⅲ)となる。
[岩本振武]