江富郷(読み)えずみごう

日本歴史地名大系 「江富郷」の解説

江富郷
えずみごう

現在の下江留しもえどめ上泉かみいずみ宗高むなだか上新田かみしんでんおよび藤枝市の善左衛門ぜんざえもん源助げんすけ付近に比定される中世の郷。現在でも古老はエドミと発音せずに、エズミと発音することから、郷名は古来から発音されていたというエズミもしくはイズミであろう(大井川町史)。建武元年(一三三四)七月一二日の後醍醐天皇綸旨案(南禅寺文書、以下とくに断らない限り同文書)に江富郷とみえ、当郷を含む初倉はづくら庄内の大井川以東の鮎河あいかわ吉永よしなが藤守ふじもりの四郷が京都南禅寺に寄進され、翌二年四月二二日にはこの四郷など国衙の綺や国使・守護使等の入部が停止され、臨時の国役に対する免許を受けている(太政官符)。翌三年一二月一一日、室町幕府は同月五日の足利尊氏御判御教書(案)を受けたかたちで四郷を南禅寺に交付している(「高師直奉書」秋元興朝氏所蔵文書)。翌四年一月二〇日、南禅寺は当郷内守延名の京上夫・日公事菜料等を止めて、下行米を毎年一〇石進済することを命じた(南禅寺都寺心法・監寺得観連署下知状)

観応三年(一三五二)九月二一日、足利義詮は遠江守護今川範国に対し当郷などでの軍勢濫妨狼藉を停止させている(足利義詮御教書)。さらに義詮は貞治三年(一三六四)一二月二六日、建武二年の太政官符を踏まえて再度官使・守護使の入部を停止し、国役等を免除している(足利義詮御教書案)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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