日本大百科全書(ニッポニカ) 「江永」の意味・わかりやすい解説
江永
こうえい
(1681―1763)
中国、清(しん)朝中葉前期の学者。字(あざな)は慎修(しんしゅう)。安徽(あんき)省婺源(ぶげん)県(いま江西省)の人。21歳で県の学生となったが仕官せず、在野の学者として生涯を終えた。礼の学に深く、朱子(朱熹(しゅき))の『儀礼経伝通解(ぎらいけいでんつうかい)』に倣い、経にみえる礼に関する記述を系統的に整理した『礼書綱目』全80巻をはじめ、『論語』郷党篇(へん)を読むために古代の衣服・宮室・車制などを考証し図示した『郷党図考』、また『周礼(しゅらい)疑義挙要』『礼記訓義択言(らいきくんぎたくげん)』などの著述がある。楽律(がくりつ)の研究に『律呂闡微(りつりょせんび)』、また清初の梅文鼎(ばいぶんてい)の暦算学を承(う)けての『翼梅』『算学』、顧炎武(こえんぶ)の古韻(こいん)十部説を審音の立場から十三部に修正した『古韻標準』は弟子の戴震(たいしん)を経て段玉裁(だんぎょくさい)の十七部説を生む。朱子学者としての面目『近思録集注』もある。
[近藤光男 2016年3月18日]