改訂新版 世界大百科事典 「池司」の意味・わかりやすい解説
池司 (いけし)
中世・近世において灌漑用の池水の管理・運営をつかさどった役人。池司と同じような用水の管理・運営にあたったものを池守,池奉行,井司,井奉行,井守等ともよんでいる。しかし池司,池奉行,池守がそれぞれ異なった職掌を分担している場合もあったようである。例えば1545年(天文14)法隆寺領鹿田池の管理にあたったのは〈池奉行長芸英資池守長泉坊〉であり,2人の池奉行とその下に属する池守1人がいたようである。用水の適切な管理,公平な配分には,その用水に熟知していること,公平無私な人物であること等がもとめられるが,1359年(正平14・延文4)大和国西大寺の新池をめぐる置文(おきぶみ)によると,新池の管理は同寺の寺僧奉行に一任され,寺僧奉行は在地の〈器用仁〉を選んで分水奉行に任じて,用水の配分を行わせている。〈器用仁〉とは上述のような人物を意味している。池司や分水奉行に補任されたものの多くは,在地の有力な名主層であった。また,池司などには一定の給分・得分が与えられていた。和泉国鶴田池の池司職は建立以来給田が与えられていたが,なかには一定の用水利用の特権が与えられたり,徴収した井料(用水使用料)の一部を給与される場合もあった。このような給分・得分をもった池司職は相伝・売買の対象ともなるにいたった。
執筆者:福田 栄次郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報