室町幕府における行事の一つ。武家社会における儀礼化が進んだ室町期には,幕府の諸事についても吉例,恒例と称して年中行事化されることが多かった。沙汰とは裁判,命令を意味することばであるが,室町中期の記録には,御前御沙汰始,室町殿(将軍)御沙汰始,幕府沙汰始,侍所沙汰始,小侍所沙汰始,政所御沙汰始などといったものがみえている。将軍,幕府や訴訟裁判をあつかう諸役所において,それぞれ式日を定めて行った。このうちの御前御沙汰始,室町殿御沙汰始は,いうまでもなく将軍の御前で行われる幕府の沙汰始であり,足利義満期以来毎年2月17日を式日としていた。この将軍御前の沙汰始の構成員は管領,評定衆のほかに数名の奉行人が加えられ,これに出席する資格のある者は御前沙汰衆と呼ばれた。内容は奉行人が披露する3件ほどの事案を将軍が裁決するものであるが,形骸化していた評定始(ひようじようはじめ)に比べれば,より実質的なものであったといえる。
→御前沙汰 →沙汰
執筆者:二木 謙一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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