かん‐れい クヮン‥【管領】
〘名〙
※和漢朗詠(1018頃)上「歌酒は家々花は処々
(ところどころ)、空しく上陽の春を
管領
(くゎんれい)することなかれ〈
白居易〉」
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「前の長者の為に所職を没収せられたりけるも、もとのごとく管領(クハンレイ)すべきよし仰下さる」
※日中行事(1334‐38頃)「代厄の御まつり。くはんれいの陰陽師つとむる也」
④
室町幕府の職名。
将軍を補佐し、
政務全体を管理した。はじめ
執事(しつじ)といったが、
貞治元年(
一三六二)
斯波義将が執事となってからこの名を用いるようになった。室町中期からは、足利一門の
斯波、
細川、
畠山の三家のうちから任命されるのが例となった(
三管領、三管)。かんりょう。
管領職(かんれいしき)。
※東寺百合文書‐に・康正二年(1456)五月八日・村上治部進書状「さ候やうにも候はは、くゎんれいさま御奉行の御をり」
※上杉系図「憲実 永享十一年庚未年、管領持氏将軍義教合戦之時」
※鎌倉大草紙(16C中か)「上杉房州道合依二重病一て管領を辞し」
[語誌]漢音「クヮンレイ」、
呉音「クヮンリャウ」の両形が中世を通じて並び行なわれたが、中世の職名としては漢音「クヮンレイ」が正式で、中世の節用集類もこの形だけを載せている。
かん‐りょう クヮンリャウ【管領】
〘名〙 (「りょう」は「領」の呉音)
① (━する) 自分のものにすること。自分のものとして、完全に対象を掌握すること。
かんれい。
※菅家文草(900頃)一・奉和王大夫賀対策及第之作「莫レ道成功能管領、一枝蠹桂謝二家君一」
※太平記(14C後)八「財宝を官領
(クヮンリャウ)せんと志さして」 〔胡曾‐贈薛濤
詩〕
② (━する) 管理、支配すること。領有すること。かんれい。
※吾妻鏡‐治承四年(1180)九月一九日「如二当時一者、率土皆無レ非二平相国禅閣之管領一」
※高野本平家(13C前)七「四海を管領(クハンリャウ)して万民を悩乱せしむ」
③ 土地や人間を管理、支配する人。また、その職。頭領。かんれい。
※観心寺文書‐元慶七年(883)九月一五日・河内国観心寺縁起資財帳「但不経僧綱講師管領、師資相承、門徒相存」
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管領
かんれい
室町幕府の職名。政務の最高責任者として将軍を補佐した。鎌倉幕府の執権に相当する役職。幕府の開創当初にも執事(しつじ)とよばれる将軍の補佐役があったが、これに起用された人物は高師直(こうのもろなお)、仁木頼章(にきよりあき)、細川清氏(きようじ)ら足利(あしかが)一門でも末流の人々で、足利氏の家宰的色彩が強かった。ところが1362年(正平17・貞治1)、13歳の斯波義将(しばよしまさ)が任ぜられ、父の高経(たかつね)が後見(こうけん)役になったときから、引付(ひきつけ)方や侍所(さむらいどころ)などの幕府中枢機関を掌握することとなり、呼び方も管領とされるようになった。評定、引付を中心とする鎌倉幕府を受け継いだ幕府初期の体制から、将軍を中心に有力守護大名が結集する体制に転換したことを示すものであろう。以来管領は細川、斯波、畠山(はたけやま)の3家から任ぜられるのが例となり、三職あるいは三管領とよばれた。将軍が若年である場合には将軍にかわる権限をもつこともあったが、守護大名連合体制が破れる応仁(おうにん)の乱(1467~77)を契機に、その政治的意味は低下していった。
[桑山浩然]
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管領
かんれい
将軍を補佐し内外の政務を統轄する室町幕府の職名。最初,執事と称されていたが,正平 17=貞治1 (1362) 年斯波義将が任命されたときから管領となった。その後再び執事と呼ばれたこともあったが,3代将軍足利義満のときに管領職がおかれ,足利氏の一族,斯波,細川,畠山の3氏が交代で就任したのでこの3氏を三管領 (→三管四職 ) といった。管領が出軍などの理由でその任務を遂行できない場合は,臨時に管領代がおかれた。室町幕府の政務の実権は管領にあったが,応仁の乱以後は名目化し,欠職した場合もあった。
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管領
かんれい
室町幕府の職名
鎌倉幕府の執権にあたり,将軍を補佐して政務を統轄する。初め執事といい,高師直 (こうのもろなお) ・細川清氏・仁木頼章らが就任。1362年斯波義将 (しばよしまさ) が任じられて以降管領と称し,のち義将に代わって細川頼之 (よりゆき) が就任。'98年畠山基国が管領に任じられてから,足利氏の一族である斯波・細川・畠山の3氏が交替して就任することになり,この3氏を三管領という。
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デジタル大辞泉
「管領」の意味・読み・例文・類語
かん‐りょう〔クワンリヤウ〕【管領】
[名](スル)
1 領有し、支配すること。また、その人。
「己の党与を諸国に配賦し以て―せしめたり」〈田口・日本開化小史〉
2 自分のものにすること。
「良からんずる宿をも取り、財宝をも―せんと志して」〈太平記・八〉
3 ⇒かんれい(管領)
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かんれい【管領】
室町幕府の職名。本来の語は役職や不動産を管掌・領知する意。鎌倉幕府が北条氏の家宰を〈内(うち)管領〉と称したことなどが用例の始まりで,室町幕府に入っては鎮西探題を鎮西管領と称し,四国管領,中国管領など,広域行政権の管轄者をも管領と称するようになった。このような管領の語が,将軍家の家宰である執事を指す用語に専用されるに至ったのは南北朝後半期のことである。室町幕府の執事は将軍を補佐する幕府内最高の官職で侍所・政所・問注所などの諸機関を統轄し,将軍家御教書(みぎようしよ)の奉者として文書行政を一手に管掌したが,観応の擾乱以前は将軍足利尊氏の弟,直義の権限が強大で,執事高師直の実権は圧縮されていた。
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普及版 字通
「管領」の読み・字形・画数・意味
【管領】かんりよう(くわんりやう)
支配する。受け取る。唐・白居易〔早春晩帰〕詩 金谷の風光、
に依りて在り 人の石家(石崇)の春を管領する無し字通「管」の項目を見る。
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