沿岸湧昇(読み)えんがんゆうしょう(その他表記)coastal upwelling

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沿岸湧昇」の意味・わかりやすい解説

沿岸湧昇
えんがんゆうしょう
coastal upwelling

沿岸における海水の湧昇現象。北アメリカのカリフォルニア沿岸や南アメリカのペルー沿岸などは世界有数の漁場となっているが,これは海水の沿岸湧昇のためである。湧昇流深層栄養塩類表層付近に多量に運ぶので,これを餌とするプランクトン成育がよく,さらにプランクトンを餌にする魚類が繁殖する。沿岸湧昇の起る原因についてはかなり研究が進んでおり,北半球においては,岸を左にみて風が1日以上吹き続けると表層数十mの間にある海水は沖に向って輸送されるので,これを補うために深層から海水が湧上がってくるためとされている。カリフォルニアやペルーの沿岸湧昇域は幅が岸から沖合い数十 kmに達し,長さは沿岸に沿って数百~数千 kmにも達する広大なものである。

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海の事典 「沿岸湧昇」の解説

沿岸湧昇

地球自転にともなうコリオリの力が働くため、表層の水は全体として北(南)半球では風の方向に直角右(左)向きに運ばれる(エクマンの吹送流)。したがっ て、海岸を左(右)に見て海岸に平行な風が吹くと、沿岸域の表層水は沖に運ばれ、一方が海岸に遮られているため、その後に下層の冷たい栄養塩に富んだ海水 が湧昇してくる。この現象を沿岸湧昇と呼ぶ。太平洋上に高気圧が発達する夏期に、北風の卓越する北半球のカリフォルニア沿岸や、南風の卓越する南半球のペ ルー沿岸が代表的な沿岸湧昇域である。 (永田

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