法人格否認(読み)ほうじんかくひにん

改訂新版 世界大百科事典 「法人格否認」の意味・わかりやすい解説

法人格否認 (ほうじんかくひにん)

会社と株主の間または会社間の法人格の独立性を否定し,両者を同一視することをいう。株式会社は法人であり,会社と株主の法律関係は別個独立に形成される。株主は会社債務に責任がない(株主有限責任)。日本には100万社を超える株式会社があり,その相当数は個人企業が節税目的または株主有限責任を利用するために〈法人成り〉したものである。株主が実質上1人のこのような会社では(一人会社),会社と株主の財産・取引関係が不明確な場合が多い。会社形態が単なるわら人形であり,その実質がまったく個人企業と認められ,取引の相手方にとって会社,株主のどちらと取引したか不分明なとき(形骸会社),相手方を保護するため,会社(株主)名義の取引を株主(会社)の取引とすることができる。経営不振の会社の支配株主が会社財産を清算手続なしに第二会社に移転する等,会社法人格の別異性を利用して債権者を害したり,法律規定を回避する場合にも(法人格濫用),不当な結果を避けるため会社と株主または第一・第二会社を同一視することができる。もっとも,法人格否認とはいわばスローガンにすぎず,税法上の法人格否認が所得帰属認定問題であるのと同様,私法上の法人格否認とは,会社と株主間の実質関係を配慮した規範解釈問題にすぎず,法人格否認のための一般的要件はないという見解もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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