行政行為を裁量との関係で覊束(きそく)行為と裁量行為とに分類するとき、裁量行為のうち、法にかなった裁量を法規裁量または覊束裁量という。法から独立した裁量である自由裁量(便宜裁量)に対する観念。覊束行為と法規裁量(覊束裁量)はこのように観念的には区別されているが、いずれも法に覊束(しばられること)され、その誤りは司法審査の対象となる点では変わりはないので、その区別の実益はない。これに対し、自由裁量は、踰越(ゆえつ)・濫用がない限り、司法審査の対象とならないので、覊束行為や法規裁量(覊束裁量)と区別する実益がある。
たとえば、医師免許の欠格事由である未成年者ということばは覊束行為上の概念であり(医師法3条)、公務員の懲戒処分事由である「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合」(国家公務員法82条、地方公務員法29条)は法規(覊束)裁量概念である。
[阿部泰隆]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…このような規定は,行政行為の要件と効果について行政庁に行政裁量を認めたものである。ところで,従来の自由裁量論は,裁量行為の中で,裁判所の審査に服するものと,服しないものとを分類し,前者を何が法であるかの裁量すなわち法規裁量(羈束裁量),後者を何が行政の目的または公益に適合するかの裁量すなわち便宜裁量(目的裁量,狭義の自由裁量)としたうえで,法規裁量と自由裁量の区別の基準を何に求めるかという議論が中心になっている。通説的見解は,法の趣旨・目的の合理的・合目的的解釈により,法が一般法則性を予定している場合か,政治的・技術的裁量を許容する趣旨であるかによって区別すべきであるとする。…
※「法規裁量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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