伝統的理解によれば,行政庁とは,国・地方公共団体などの行政主体または行政体の意思や判断を決定し,それを外部の相手方に対して表示する権限を有する行政機関であって,原則として独任制をとるものをいうとされてきた(例,行政不服審査法1条,行政事件訴訟法3条,行政代執行法2条など。ただし,行政事件訴訟法3条の〈行政庁〉には地方議員に懲罰をなす地方議会も含まれる)。その具体例としては,伝統的に行政庁とされてきた各大臣や国の機関委任事務を処理する普通地方公共団体の長,さらに合議制の行政委員会や各庁の長官のほか,例外的に行政庁以外の行政機関が行政法規により行政庁として行為する場合がある(例,国税通則法16条などの税務署長・国税局長,恩給法12条の恩給局長,建築基準法6条の建築主事など)。この行政庁は,〈権限配分の単位〉としての行政機関のなかで最も重要なものであり,これとの関係において他の行政機関(補助機関,参与機関,諮問機関,執行機関など)が位置づけられてきた。行政庁のうち国のそれをとくに〈行政官庁〉ということがあるが,この概念は,現行法上,主として国家行政組織法の前提とする〈事務配分の単位〉としての〈行政官署〉(行政庁その他の行政機関を含む複合的組織体),すなわち〈国の行政機関〉(国家行政組織法3条2・4項,別表1)をさすこともある。なお,地方自治法上の〈行政庁〉(151条など)は,支庁,地方事務所,支所,出張所などの地方公共団体の地方出先機関をさす(155条)。
執筆者:間田 穆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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