深夜の酒宴(読み)シンヤノシュエン

デジタル大辞泉 「深夜の酒宴」の意味・読み・例文・類語

しんやのしゅえん【深夜の酒宴】

椎名麟三中編小説。昭和22年(1947)、「展望」誌に発表著者の実質的なデビュー作。

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関連語 酒宴 深夜

日本大百科全書(ニッポニカ) 「深夜の酒宴」の意味・わかりやすい解説

深夜の酒宴
しんやのしゅえん

椎名麟三(しいなりんぞう)の中編小説。1947年(昭和22)2月『展望』に発表。のち作品集『重き流れのなかに』(1948・筑摩書房)に収録。1946年7月脱稿の『黒い運河』を改作したもの。かつて共産党員であった主人公の須巻(すまき)は戦後廃墟(はいきょ)のなかで、獄舎を思わせる奇妙なアパートに不幸な住人たちと暮らしているが、彼は存在のすべてが「重い」と嘆じつつ、あえてこれに「堪え」続けてゆこうとする。そこには戦後社会への一種決然たる拒絶があり、しかも拒絶しつつなお生きんとする逆説的な激情(パトス)の脈動が感じられ、その社会の最下層民の生活と観念的、形而上(けいじじょう)的論議の不思議な融合は、戦後における独自の実存的文学の登場として注目された。

[佐藤泰正]

『『深夜の酒宴』(『筑摩現代文学大系66』所収・1976・筑摩書房)』

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世界大百科事典(旧版)内の深夜の酒宴の言及

【椎名麟三】より

…この間ニーチェ,キルケゴールなど実存主義の思想にふれ,その後38年,ドストエフスキーから決定的な影響を受けて文学にむかう。47年,戦後文学の記念碑的作品ともいうべき《深夜の酒宴》をもって登場。以後《重き流れのなかに》(1947),《永遠なる序章》(1948),《赤い孤独者》(1951)などの実存主義的作風は戦後文学の一時期を代表するものとなり,50年のキリスト教入信後は《邂逅》(1952),《自由の彼方で》(1953‐54),《美しい女》(1955)などにニヒリズムの超克を目指す独自の宗教的作風を示した。…

※「深夜の酒宴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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