深淵より(読み)しんえんより(その他表記)De profundis

改訂新版 世界大百科事典 「深淵より」の意味・わかりやすい解説

深淵より (しんえんより)
De profundis

イギリスの作家O.ワイルドがアルフレッド・ダグラスとの同性愛の罪で1895-97年に投獄されたおりに,獄中からダグラスにあてた手紙の形式をとって書いた告白録。削除版は1905年,完本は49年に出版。自身の行動を説明すると同時に,獄中の体験や感慨,人生観,芸術観,宗教観なども述べた重要な文献表題ラテン語で,旧約聖書の《詩篇》からとった祈禱文の一節。《獄中記》と題する邦訳もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「深淵より」の意味・わかりやすい解説

深淵より
しんえんより
De Profundis

イギリスの作家 O.ワイルドの獄中手記。 R.ロス編集の省略本 (1905) にはこの表題 (聖書『詩篇』の句) がつけられたが,1949年出版の完本は『書簡牢獄と鎖につながれて』 Epistle,in Carcere et Vinculisと題し,獄中からの書簡であることを示している。レディング刑務所に収監されたワイルドが同性愛事件の相手ボシー (A.ダグラス卿) にあてた 80ページの手紙で,原文はワイルドから親友ロスに贈られ,ロスはそれを大英博物館に寄贈した。ダグラスへの恨み言を連ねているが,獄中での瞑想に基づく注目すべきハムレット論,特にキリスト論が重要である。

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世界大百科事典(旧版)内の深淵よりの言及

【ワイルド】より

…英訳は翌年発表),機知にあふれた風俗喜劇《ウィンダミア夫人の扇》(1892初演),《誠こそたいせつ》(1895)など,イギリス,アメリカのみならず各国の劇壇でいまなお上演されている。ほかに《社会主義下における人間の魂》(1891),獄中からダグラスにあてた手紙の形をとる《深淵より》などが重要な著作である。 日本では大正時代から新劇運動に大きな影響を与えたほか,谷崎潤一郎など〈耽美派〉の文学者の多くがワイルドに心酔した。…

※「深淵より」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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