日本大百科全書(ニッポニカ) 「渡りチョウ」の意味・わかりやすい解説
渡りチョウ
わたりちょう
北方の繁殖地と南方の越冬地の間を移動して生活するチョウの総称。海を越えて数千キロメートルにおよぶ移動をするものもいる。カナダからアメリカ、メキシコの間を3000キロメートル以上移動するオオカバマダラと、日本の北海道や本州、南西諸島や台湾の間のおよそ2000キロメートルを渡るアサギマダラが、長距離の渡りをするチョウとして知られている。これらのチョウは、上昇気流を利用して上空に舞い上がり、風に乗って移動する。途中、海面近くを舞う姿や、海面にとまっているようすも確認されているが、そのような行動の意味や方角をどのように把握しているかなど、生態については詳しくわかっていない。
2013年(平成25)6月、専門家らでつくるアサギマダラの調査ネットワーク、アサギネットは、アサギマダラによる大分県姫島村から北海道上ノ国(かみのくに)町への1200キロメートルの渡りを確認した。確認方法は全国の愛好家らが参加して行われているマーキング調査であった。これは捕獲したチョウの翅(はね)の裏側に油性ペンでチョウの個体番号や発見場所、発見者がわかる記号や文字を記しておき、このチョウが違う場所で再捕獲されたときに、最初に登録された情報と照合され、チョウの移動経路を知るデータとする。これまでの調査では、北海道や本州北部に飛来したアサギマダラは6月ごろに卵を産み、8月ごろに羽化した新しい世代が、南方へ移動していくことがわかっている。
[編集部]