改訂新版 世界大百科事典 「オオカバマダラ」の意味・わかりやすい解説
オオカバマダラ
Danaus plexippus
鱗翅目マダラチョウ科の昆虫。米名はmonarch,monarch butterfly,英名はmilk-weed butterfly。昭和初期までは沖縄,小笠原諸島にふつうであったが,近年は日本に定住していない。アメリカ大陸の原産であるが,現在はオセアニアをはじめ,カナリア諸島まで分布している。イギリスでは19世紀末から迷チョウがたびたび記録されている。中型,開張は9.5cm前後。雌は雄より少し大きい。色彩,斑紋は雌雄で大差ない。表面,裏面とも赤褐色の地に黒い翅脈が走り,周辺部には白い点がある。表面の地色がやや濃く,雄の後翅には性標がある。年数回の発生。
北アメリカ大陸では本種は2000~3000kmもの渡りをするので有名である。秋になると,フロリダ,カリフォルニア,メキシコなどにある数ヵ所の越冬地目ざしてカナダあたりから南下し,そこに集合する。狭い地域に何十万匹もがひしめく光景は奇観である。冬も暖かい日には摂食,交尾などの行動が見られる。春になって幼虫の食草のガガイモ科トウワタ属の植物がのびると成虫は越冬地を徐々に去り,産卵しながら北進する。幼虫が有毒植物を食べるため,成虫も捕食から免れる。アメリカ産のタテハチョウ数種が本種に擬態する。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報