中国の河川。黄河(こうが/ホワンホー)の最大の支流。渭水(いすい)、渭川(いせん)ともいう。甘粛(かんしゅく/カンスー)省南部渭源県の南、鳥鼠(ちょうそ)山に源を発し、秦嶺(しんれい/チンリン)山脈の北を東流、甘粛省東部、陝西(せんせい/シャンシー)省中部を貫流して、黄河が大きく東へ湾曲する地点で合流する。甘粛省では天水盆地、陝西省では渭河平原を形成し、延長787キロメートル、流域面積は13万4000平方キロメートルに達する。南から流入する支流は短く急流をなすが、北からの流れは黄土(こうど/ホワントゥー)高原に流域をもち、涇河(けいが/チンホー)や洛河(らくが/ルオホー)のように集水面積も広く緩流のものが多く、黄土特有の地形を発達させる。黄土の沖積土からなる平野は肥沃(ひよく)であるが、地形と乾燥気候のため人工灌漑(かんがい)が必要で、とくに渭河平原北部では古代から鄭国渠(ていこくきょ)、白渠などの人口水道がつくられた。現在も洛恵渠、涇恵渠、渭恵渠などの灌漑で、全国でも有数の農業基地となり、綿花、小麦などの栽培が盛んである。流域の西安(せいあん/シーアン)を中心とした地域(関中(かんちゅう/コワンチョン))は、古代から文化の中心で多くの歴史的遺跡がある。
[秋山元秀]
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…中国,陝西省中部の黄河最大の支流。渭河(いが)ともいう。甘粛省南部の鳥鼠(ちようそ)山から発し,東流して陝西省宝鶏に入り,西安,臨潼などをへて潼関県で黄河と合流する。…
… 黄河の下流部は,華北平原の上で大規模な河道の大変動を繰り返したかは図に示したが,大量の泥まじりの河水の流下と堆積は,かつて黄海の中の島であった山東丘陵を陸繫島とし,黄土高原と山東丘陵の間に広大な華北平原を作りあげることにより,ここを漢民族による中国文明形成の舞台とした。だがもう一つ見逃してならないのは黄河中流部の湖成盆地であり,黄河の支流の渭河(いが)と汾河(ふんが)の貫流する部分である。汾河河谷も,太行山脈東麓の華北平原とともに殷商文明以前の歴史の展開した舞台でもあるが,とくに重要なのは渭河平原である。…
※「渭河」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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