黄土(読み)オウド

デジタル大辞泉 「黄土」の意味・読み・例文・類語

おう‐ど〔ワウ‐〕【黄土】

風で運ばれて堆積した淡黄色または灰黄色の細粒の土。中国北部・ヨーロッパ北アメリカ北アフリカニュージーランドなどに分布。レス。こうど
珪酸けいさんアルミニウムに酸化鉄を含んだもの。天然の黄色顔料で、塗料・人造石セメント絵の具などに使用。オーカーオークル。こうど。
[類語]土壌土地大地壌土土砂赤土黒土緑土凍土ローム粘土陶土はに壁土アンツーカー腐植土腐葉土シルト残土

こう‐ど〔クワウ‐〕【黄土】

おうど(黄土)1
死後の世界。あの世黄泉こうせん
「無限の遺恨うらみを―にもたらして」〈魯庵社会百面相

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精選版 日本国語大辞典 「黄土」の意味・読み・例文・類語

こう‐どクヮウ‥【黄土】

  1. 〘 名詞 〙
  2. おうど(黄土)
  3. 石英、長石、雲母などを含む細砂、粘土から成る黄褐色の土。砂漠などから風によって半乾燥地に運ばれ、堆積したもの。中国山西省、河北省の黄河地域に代表される。おうど
    1. [初出の実例]「所謂『黄土』と称し、黄河の濁江汪々として其間に曲折し」(出典:日本風景論(1894)〈志賀重昂〉四)
  4. 地下にあると考えられていた死後の世界。よみじ。めいど。黄泉。〔琵琶記‐感格墳成〕

おう‐どワウ‥【黄土】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 赤土から採った顔料。粉末状の酸化鉄で、ふつう粘土に混ぜて、顔料や塗料に用い、また、リノリウムや製紙の原料になる。オーカー。オークル。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
  3. こうど(黄土)

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普及版 字通 「黄土」の読み・字形・画数・意味

【黄土】こう(くわう)ど

黄色い土。〔太平御覧、七十八に引く漢・応劭の風俗通〕俗に(い)ふ、天地開闢し、未だ人民らず。女土を搏(まろ)めて人を作る。劇務にして、力、供するに暇あらず。乃ち(なは)を泥中に引き、擧げて以て人と爲す。故に富貴なる土の人なり。庸なるの人なり。

字通「黄」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄土」の意味・わかりやすい解説

黄土(おうど)
おうど

中国大陸北部、ヨーロッパ中部~東部、北アフリカ、北アメリカ中部、ニュージーランド南島などに広く分布する風成堆積物(たいせきぶつ)の呼称。黄土(こうど)またはレスloessともいう。淡黄色または灰黄色のシルト質(砂粒と粘土粒子との中間の粒径をもつ粒子が主成分)で固結度の低い地層をなし、中国のものは黄土とよばれ、黄河(こうが)の流域に深く急峻(きゅうしゅん)な谷壁をなして露出している。レスの物質は多孔質で、河岸の乾いた壁面には垂直方向の割れ目が生じ、崩壊をおこしやすい。層中を浸透する水の沈積作用で、炭酸塩のレスキンダーLoesskinder(ドイツ語)とよばれる細長い固結物ができる。中国の場合はアジア内陸のモンゴル、タクリマカンなどの砂漠から、ヨーロッパや北アメリカなどでは約260万年前以降の第四紀の氷河時代に広がっていた大陸氷河周辺の氷成堆積物から、偏西風の風下側に飛来した微細な砂粒(すなわちシルト)が黄土の根源である。

 風成堆積物としての黄土の分布範囲はきわめて広い。日本の北九州から山陰地方には、砂丘の層の間に、中国大陸からと推定される黄土(レス)の混入している部分が発見されており、現在も微量ではあるが飛来することがある。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]


黄土(こうど)
こうど

黄土

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黄土」の意味・わかりやすい解説

黄土
おうど
loess

粘土,細砂からなり,均質,多孔質,粗鬆(そしょう)な黄褐色の土。レスともいう。無層理で風化によって縦の割れ目が発達する。石灰分 CaCO3が多く,これが黄土小僧,しょうが石と呼ばれる特有の結核となって含まれる。鉱物は石英が多く,少量の粘土鉱物,長石,雲母などの有色鉱物を伴う。中国北部,ヨーロッパ,北アメリカ,北アフリカ,ニュージーランドなど世界的に分布する。日本では玄海砂丘,山口県安岡付近にレス状砂からなる古砂丘があるといわれる。黄土は中央ヨーロッパでは厚さ 10~20mで 4層に分けられ,間に氷河による堆石の層がある。中国の黄土は 1879年フェルディナント・ウィルヘルム・リヒトホーフェンが厚さ 600mに及ぶとしたが,今日ではこれは新第三紀以後の赤色粘土層全体をさすもので,黄土は 10m程度と訂正されている。黄土は更新世の氷食によってできた岩粉が乾燥気候の時期に風で運ばれたものとされているが,ほかに湖成説,河成説などもある。黄土は毛管水を吸上げる性質があるので,乾燥期でも農作物が育つ。黄土は細粒のため風が吹けば「黄塵万丈」状態になり,水中では懸濁して黄河,黄海の泥水のもとになっている。

黄土
こうど

黄土」のページをご覧ください。

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岩石学辞典 「黄土」の解説

黄土

均質で層理がないシルト粒度の黄色い堆積物で,北西ヨーロッパから中国の地域に産出し,米国にも産出する.垂直の節理がよく発達し,炭酸カルシウムが広く染みこみ,しばしば草の根を取り巻いて堆積したことを示す垂直の管が存在する.炭酸塩の団塊が黄土人形(loess dolls ; loess puppchen)を作る.石英は多量に含まれている.一般に風で吹かれた砂塵の濃集したものと考えられている[Ganssen : 1927, Ollier : 1969].cold loess, infusion loess, warm leoesなどがある.ドイツ語のloessは緩んだとの意味.

黄土

天然に産する鉱物性の色素.風化残留物で形成され,一般にはゲーサイト,褐鉄鉱,赤鉄鉱,酸化マンガンからなり,様々な粘土を含んでいる.黄土は褪色しない絵具として使用され,赤色,黄色,褐色の深い色合いとなる.鉄とマンガンの比率は絵の色に影響する.イタリアのシエナ(Sienna)は良く知られた黄褐色の黄土を産する.この語は,クローム・オカー(chrome ochre)やウラン・オカー(uran ochre)などのように,他の分解した物質にも用いられる[Hill : 1774, Lingdren : 1928, Bateman : 1952].

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化学辞典 第2版 「黄土」の解説

黄土
オウド
loess

レスともいう.大気中を風で運搬され堆積した淡黄色,あるいは灰色の土.0.05~0.005 mm の微砂が50% 以上存在する.構成鉱物は石英が多く,少量の粘土鉱物,長石雲母角せん石輝石などである.中国北部,ヨーロッパ,北アメリカ,北アフリカなど世界的に分布する.

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「黄土」の解説

黄土(こうど)

岩石の風化土。微粒で灰黄色。珪酸(けいさん),アルミ,アルカリなどが主成分。水はけがよく,農耕に適している。黄土分布の代表的なものは,内陸砂漠の微粒子が風によって吹き寄せられた中国華北の黄土地帯である。中国の古代文明である黄河文明はこの土による恩恵がもたらしたものだといわれている。

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改訂新版 世界大百科事典 「黄土」の意味・わかりやすい解説

黄土 (おうど)


黄土 (こうど)

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百科事典マイペディア 「黄土」の意味・わかりやすい解説

黄土【おうど】

レス

黄土【こうど】

レス

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世界大百科事典(旧版)内の黄土の言及

【絵具】より

…奈良時代の《絵因果経》に使われた赤色は丹である。黄色には酸化鉄から成る黄土と,ヒ素の硫化物の石黄があり,石黄は,雄黄や雌黄などとも呼ばれ強い毒薬としても使われた。白には白土,鉛白などがあり,白土はカオリンを含む陶土で壁画や木彫彩色など各所に古くから使われた。…

【レス】より

…第四紀の氷期に大陸氷河の周辺地域や砂漠地域から風で運ばれて陸上に厚く堆積した,淡黄色ないし灰黄色を呈する非固結の風成堆積物。黄土(おうど∥こうど)ともいう。中国の北部・東北部,中央アジア,ヨーロッパ・ロシア南部,中部ヨーロッパ,北アフリカ,北アメリカ中央部,アルゼンチン,ニュージーランドなどに広く分布し,世界の陸地表面の約10%をおおっている。…

【レース】より

…衣服や衣服の装飾,アクセサリー,カーテンやテーブル掛けなどの部屋飾りに用いられる透し模様のある布。俗ラテン語のラキウムlacium(〈結んでできる輪〉の意)を語源とし,1本または何本かの糸を,かがる,からげる,編む,結ぶ,より合わせる,組み合わせるなどして透し模様にしたものをいう。しかし広義には,はじめに布があってその布の一部を切り取る,織り糸を引きしぼる,あるいは抜き取ってかがるなどして透し模様にしたもの,また網状の布(ネットやチュールなど)に模様を刺繡してレース状に加工したものもレースの名で呼ばれる。…

※「黄土」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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