改訂新版 世界大百科事典 「漢字入出力装置」の意味・わかりやすい解説
漢字入出力装置 (かんじにゅうしゅつりょくそうち)
コンピューターで日本語の処理を行うためには,数千字に及ぶ漢字の入出力が必要となる。漢字コードは,1文字当り2バイト,すなわち16ビットで表されている。漢字入力の方式は,文字盤の上に文字を多数並べてオペレーターが選択するものと,かな,あるいはローマ字で入力して漢字に変換するものがある。文字盤で選択する方式では文字を日本語タイプライターに類似した配列で並べ,ペンなどで指すことにより入力する。かな入力漢字変換方式には,漢字1文字をかな2文字で符号化し,オペレーターがそのかな符号を入力して変換する方式と,単語の読みをかなで入力し,変換辞書により漢字に変換する方式がある。後者の場合同音異義語が多いため1回の変換で正しい漢字が選択されるとは限らず,いくつかの候補から正しいものを選択する操作が必要である。また動詞など活用のある単語の変換のためには,文節を入力して文法的な解析を行い正しい文字を選択する。文字盤や変換辞書に含まれない特殊な文字を入力する場合は,文字コードの表を検索し,文字に対応したコードを直接入力する必要がある。
漢字の出力には,活字を直接コンピューター制御で選択印字する方式もあるが,機構が複雑で速度も遅いので,ふつうはドットマトリックスによる印字が使用される。ドット密度を高くすれば正確で美しい字体で出力できるが,経済的でないため,ふつうは1文字を16×16ドット,あるいは24×24ドットで表している。この方式のプリンターとしては,多数のピンを並べたシリアルドットインパクトプリンター,多極ヘッドを使用した感熱タイプのプリンター,レーザープリンターなどが主として使用される。日本語の表示装置としては,ふつうのキャラクターディスプレーで密度を高くしたものが使用される。1980年代,上記の装置に,小型コンピューターの機能を組み込んだ文書作成機,日本語ワードプロセッサーword processor(ワープロ)が普及し,多くの文書がこの機能を用いて作成されるようになった。しかし,その後はパーソナルコンピュータpersonal computer(パソコン)が主力となった。
執筆者:林 英治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報