日本大百科全書(ニッポニカ) 「潮だまり」の意味・わかりやすい解説
潮だまり
しおだまり
潮間帯のくぼみに、潮が引いたあとに海水が残留してできる大小さまざまな水たまり。タイドプールtide poolともいう。岩礁海岸における水たまりをさす場合が多いが、かならずしもこれに限定されるものではなく、たとえば干潟の上にできる水たまりも潮だまりである。岩盤上のものをロックプールrock poolといい、干潟上のものをパンpanあるいはパドルpuddleとよぶこともある。潮だまりの環境条件は、外海のそれに比べると変化が激しい。たとえば塩分濃度は、雨水の影響でかなり低下することもあれば、逆に水分蒸発のために高くなることもある。水温も、夏期には外海に比べて高くなったり、冬期には逆に低くなったりする。このような傾向は、潮間帯の上部にあって大きさの小さいもので著しく、そのため、中にみられる生物も、そのような潮だまりほどその種類組成が貧弱である。反面、潮だまりは、海産生物にとっては乾燥を避ける都合のよい場所であり、水が干上がる所に比べると生物は豊富で、潮間帯よりも下部に主として生息する生物をみることもできる。動物には、数多くの海産種のほかに昆虫類のトウゴウヤブカの幼虫、ユスリカ類の幼虫、トビムシ類などの陸産種もみられ、潮だまりを一時的に利用しているものもあれば、全生活を潮だまりで過ごすものもある。植物では、緑藻類、褐藻類、紅藻類、藍(らん)藻類の各種がみられるが、潮間帯上部にある潮だまりでは、緑藻類、藍藻類が優占する。これら海藻類の多い潮だまりでは、昼間、光合成の結果として溶存酸素量や水素イオン濃度(pH)が非常に高くなることが知られている。
[和田恵次]