日本大百科全書(ニッポニカ) 「瀛涯勝覧」の意味・わかりやすい解説
瀛涯勝覧
えいがいしょうらん
中国、明(みん)代「鄭和(ていわ)の西洋下り」(1405~33。南海遠征)に参加し、その見聞をまとめた著作。著者は馬歓で、浙江(せっこう)省紹興(しょうこう)県出身のイスラム教徒。前後7回の航海のうち、彼が参加したのは第四、六、七次の3回であったが、その主要部分は第4次航海の報告であろうと考えられ、「鄭和の西洋下り」に関する現存のもっとも貴重な文献である。記述の対象は占城(せんじょう)(チャンパ)から天方(メッカ)に至る20か国に及んでいて、風俗、物産、制度、住民などを詳しく紹介している。なお、本書にはいくつかの系統の版本があるが、馮承釣(ふうしょうちょう)によって校注された『瀛涯勝覧校注』(1955・中華書局)を使うのが適当である。
[寺田隆信]
『小川博訳注『馬歓・瀛涯勝覧』(1969・吉川弘文館)』