化学辞典 第2版 「炭素サイクル」の解説
炭素サイクル(炭素循環)
タンソサイクルタンソジュンカン
carbon cycle
地球上で,主として生物圏,気圏,水圏の間に起こる炭素の循環のこと.地球上の炭素のほとんどは,炭酸塩および化石燃料や動物,植物に由来する有機物として地層に,また,炭酸水素イオンおよび炭酸イオンとして海洋に蓄えられている.これらの炭素の移動は非常に遅く,ほとんど循環しない.はるかに少ない量の炭素が,太陽エネルギーと生物活動により,主として二酸化炭素の形で陸上生物圏と大気との間(呼吸と光合成)および大気と海の表層との間で循環している.火力発電や工業は,循環していなかった地下貯蔵炭素を二酸化炭素として大気中に放出し,余剰の二酸化炭素を大気中に残す.余剰の二酸化炭素は温室ガス効果により地球全体の気温を上昇させ,海面上昇,降雨分布の変化,さらには,プランクトンからはじまる食物連鎖系をも変化させると予想され,異常気象が起こす食料危機や災害にも関連すると懸念されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報