無診治療(読み)むしんちりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「無診治療」の意味・わかりやすい解説

無診治療
むしんちりょう

無診治療または無診察治療とは、医師が自ら診察をせずに診断し治療を行うことをいい、患者の健康に害を及ぼす危険があるため禁止されている。医師法第20条には、「医師は、自ら診察しないで治療をし、若(も)しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」と定められている。ここでいう診察とは、「問診視診触診、聴診その他手段の如何(いかん)を問わないが、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものをいう」とされている。

 近年、情報通信機器を応用し診療の支援に用いる、いわゆる遠隔診療も実用化されている。遠隔診療についての基本的考え方としては、「診療は、医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療は、あくまで直接の対面診療を補完するものとして行うべきものである」とされており、前記医師法第20条との関係から留意すべき事項として、初診および急性期疾患に対しては原則として直接の対面診療を行うこと、直接の対面診療を行うことができる場合や他の医療機関と連携することにより直接の対面診療を行うことができる場合には、これによること、および、直接の対面診療が困難である場合に遠隔診療の対象となる患者や内容などが定められている(厚生労働省医政局長通知。平成29年7月14日一部改正)。また、最近では情報通信技術等の著しい進歩、および「医師の働き方改革に関する検討会」においてICT(情報通信技術)を活用した勤務環境改善が必要との意見が示されていることを受け、2018年(平成30)3月には「オンライン診療(遠隔診療)の適切な実施に関する指針」が策定されている。

[前田幸宏 2020年2月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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