岩石学辞典 「熔結凝灰岩」の解説
熔結凝灰岩
火砕流のマグマ物質は普通は冷却して火山ガラスとなり,そのまま液体の小滴を含む破片が固まればガラス質凝灰岩となる.しかし火砕流が急速に流下して十分厚く堆積すると,堆積した上部と下部の層は急速に冷却するが,中間部では堆積物は十分に熱いので,ガラス片は変形,熔結が行なわれ,その結果熔岩に類似した緻密な塊が形成される.熔結した部分が欠けている場合には,火砕流起源ということは明らかではない.この場合には水平に追跡して熔融部分に移行するかどうかで判断する[Bowes : 1989].しかし火砕流が急速に堆積すると,早期に下部に溜まった火砕流が冷却する前に上部に別の火砕流が溜まることになる.そこで熔結した火砕流では,岩石全体の堆積状態を決めるためには独立した流れよりも冷却の単位の方が重要となる.しかし多くの火砕流が一緒になってしまうと,よく締った熔結凝灰岩では追跡によって区別することが難しい場合が多い[Bowes : 1989].
このように熔結凝灰岩という語は,岩石そのものの名称よりは,火山砕屑流というような地質的な単位について述べることが多い.大規模な固化した火山砕屑流岩体について,熔結部分を含むもの全体を熔結凝灰岩といい,熔結部分のないものを凝灰岩とよぶのが適当のようである[鈴木 : 1994].