燻べる(読み)フスベル

デジタル大辞泉 「燻べる」の意味・読み・例文・類語

ふす・べる【×燻べる】

[動バ下一][文]ふす・ぶ[バ下二]
煙がたくさん出るように燃やす。いぶす。くすべる。「杉の枯れ葉を―・べる」
煙にあててすすで黒くする。いぶしをかける。いぶす。「銀を―・べる」
嫉妬しっとする。やきもちをやく。
「本の内侍の―・べ侍りければ」〈後撰・恋五・詞書
煙にあてて苦しめる。また、責める。
「面にくや、帰りなば―・べてやろか」〈浄・信濃源氏

くす・べる【×燻べる】

[動バ下一][文]くす・ぶ[バ下二]
くすぶらせる。いぶす。「蚊いぶしを―・べる」
相手に煙たい思いをさせる意から》責めたてる。また、嫉妬しっとする。
世間の人がそしらうが、母ぢゃ人が―・べうが」〈浄・二つ腹帯

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「燻べる」の意味・読み・例文・類語

ふす・べる【燻】

  1. 〘 他動詞 バ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ふす・ぶ 〘 他動詞 バ下二段活用 〙
  2. 火をつけて煙を立たせる。燃えあがらせないで煙ばかり出させる。いぶす。くゆらす。けむらす。くすべる。
    1. [初出の実例]「たきもののこの下烟ふすふ共我ひとりをば死なすまじやは」(出典:古今和歌六帖(976‐987頃)五)
  3. 嫉妬(しっと)する。悋気(りんき)する。やきもちをやく。
    1. [初出の実例]「こと女に物いふと聞きて、もとの女の内侍のふすべ侍りければ」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋五・九五五・詞書)
  4. 革や銀器などをくすぶる煙にあてて黒くする。すすけさせる。いぶしをかける。
  5. 煙にあてて責める。転じて、いじめる。苦しめる。
    1. [初出の実例]「至れる悲を垂れし親子も鼻を薫(フス)べ、桃の笞を以て、打ちて語らは令めずなりぬ」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))

くす・べる【燻・薫】

  1. 〘 他動詞 バ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]くす・ぶ 〘 他動詞 バ下二段活用 〙
  2. 燃やして煙を出す。くすぶらせる。いぶす。ふすべる。
    1. [初出の実例]「火打をうって火を出し、葉柴につけてくすべし也」(出典:浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)五)
  3. ( けむたい思いをさせる意から ) 責める。意見する。また、嫉妬する。
    1. [初出の実例]「小間物売と密通したるとくすべられしに」(出典:浮世草子・武道伝来記(1687)四)
  4. ( 時間を計るのに線香をたくところから ) 娼妓を買うことをいう花街の語。

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