爪白癬(読み)ツメハクセン(英語表記)Tinea unguium

デジタル大辞泉 「爪白癬」の意味・読み・例文・類語

つめ‐はくせん【爪白×癬】

医学では「そうはくせん」という》手足の爪の間に白癬菌が侵入して発症する皮膚真菌症白癬に続いて起こることが多く、爪が白く濁り、厚くなり、ボロボロと崩れる。痛みやかゆみなどの自覚症状はないが、放置すると爪が変形し、靴が履きにくくなることがある。爪水虫

そう‐はくせん【爪白×癬】

つめはくせん(爪白癬)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「爪白癬」の解説

爪白癬(爪の水虫)
つめはくせん(つめのみずむし)
Tinea unguium
(皮膚の病気)

どんな病気か

 白癬菌(はくせんきん)が爪のなかに感染して、爪の肥厚(ひこう)変色、変形が起こる病気です。頻度は全白癬患者の20%程度です。

 爪白癬は多くの場合、足や手白癬に続いて起こります。これらを放置することが最も大きな原因です。

症状の現れ方

 爪白癬は足に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。複数の病型がありますが、最も多いのが爪甲(そうこう)(爪)の先端部が白色から黄色に濁って、爪甲の下の角質部分が厚くもろくなり、全体として爪が厚くなる病型(遠位爪下型(えんいそうかがた))です。爪甲の先端部が(くさび)状に濁るのもよくみられますが、遠位爪下型に含めています。そのほかに、爪甲の表面が白色になることもあり(表在型)、まれに爪甲の付け根が濁ることもあります。

検査と診断

 直接鏡検顕微鏡での検査)KOH法で行いますが、爪では皮膚と違って菌要素を見つけにくいこと、および菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので注意が必要です。

治療の方法

 テルビナフィン(ラミシール)あるいはイトラコナゾール(イトリゾール)の内服で治療します。テルビナフィンは6カ月程度連日内服します。イトラコナゾールは、1日2回4カプセル(合計400㎎)を1カ月に1週だけ内服するパルス療法が行われます。3サイクルで有効です。ともに爪への貯留性が高いので、内服中止後もしばらくは改善していくことが少なくありません。

 皮膚真菌症診断・治療ガイドラインでは、短期間で治療を完了したい場合はイトラコナゾールのパルス療法を、時間がかかっても高い治癒率を期待する場合はテルビナフィンの連続投与を選択するとされています。

病気に気づいたらどうする

 成人の爪白癬の罹患率はかなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立歩行障害、転倒事故の原因になることも指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く内服治療を開始します。

加藤 卓朗

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「爪白癬」の解説

つめはくせんつめみずむし【爪白癬(爪みずむし) Ringworm of the Nails】

[どんな病気か]
 爪(つめ)にできる白癬で、多くは足白癬(あしはくせん)や手白癬(てはくせん)に合併します。中高年に多く、猩紅(しょうこう)色菌がおもな原因菌で、ときに毛瘡菌(もうそうきん)の感染でおこります。足の爪に多く、手の爪の数倍あります。
[症状]
 病変は爪の先端から根元に進行します。爪が白~灰白色に濁り、爪の下の角質(かくしつ)が増えて爪が厚くみえます。通常は自覚症状がなく、外傷後の変形と思われがちですが、肥厚(ひこう)、変形が強いときは爪の端が皮膚に食い込み(陥入爪(かんにゅうそう))痛むことがあります。
[治療]
 通常は経口の抗白癬剤を内服しますが、ときに副作用がみられるため、医師の指示どおり血液検査などを受けながら治療を続けなければなりません(コラム「経口抗真菌剤」)。症状が軽い場合や、経口剤が使えないときには外用の抗白癬剤を使いますが、尿素軟膏(にょうそなんこう)との併用や肥厚した爪を削ってから塗るなどの工夫が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の爪白癬の言及

【つめ(爪)】より

…マニキュアなどの化学的刺激でつめは白濁してもろくなる。つめが遊離端から白濁して厚くもろくなると,白癬(はくせん)菌の感染による爪白癬である。足に〈水虫〉のある人に多い。…

【水虫】より

…手掌に生ずると角質増殖を伴う病型になることもある。爪水虫(爪白癬tinea unguium)は足指の爪に多く,爪の甲が先端より白く混濁し,しだいに肥厚する。爪はもろくなり,粉末状に脱落する。…

※「爪白癬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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