皮膚真菌症(白癬)(読み)ひふしんきんしょう(はくせん)(英語表記)Dermatomycosis (Tinea)

六訂版 家庭医学大全科の解説

皮膚真菌症(白癬)
ひふしんきんしょう(はくせん)
Dermatomycosis (Tinea)
(感染症)

どんな感染症か

 真菌(カビ)が皮膚に感染、または寄生して起こる病気で、皮膚糸状菌(しじょうきん)白癬(はくせんきん))、カンジダ、癜風(でんぷうきん)、黒色真菌などによって起こります。ここでは、皮膚糸状菌(白癬菌)による白癬についてみていきます。

 白癬は従来、症状から以下のように分類されていました。

・表皮や爪、毛包に限局する浅在性(せんざいせい)白癬……頭部白癬、体部白癬(小水疱(すいほう)性斑状白癬)、頑癬(がんせん)、足白癬(汗疱状(かんぽうじょう)白癬)、(つめ)白癬など

・真皮から深層に強い炎症症状が起こる深在性(しんざいせい)白癬……ケルスス禿瘡(とくそう)、白癬菌性毛瘡(もうそう)、白癬菌性肉芽腫(にくげしゅ)など

 しかし近年では、発症部位によって頭部白癬、顔面白癬、体部白癬股部(こぶ)白癬陰嚢(いんのう)白癬、手白癬足白癬爪白癬などに分ける欧米式分類にならう傾向にあります。

体部白癬ゼニたむし

 体や手足にできる浅在性白癬で、頭部、手のひら、足の裏、陰嚢、陰股部を除く部位の白癬をいいます。ステロイド薬を外用している人に多く、原因菌は猩紅色菌(しょうこうしょくきん)であることが多いのですが、近年、犬猫に寄生しているイヌ小胞子菌(しょうほうしきん)による患者さんが増えています。

 比較的強いかゆみを伴う輪状に配列する発疹で、小さな水ぶくれ(小水疱)、紅いブツブツからなります。中心にはフケ状のものが付着し、病気が治ったようにみえるので、これを“中心治癒傾向がある”と表現します。

 後述する股部白癬ほど皮膚が硬く厚くなく、色素沈着も強くありません。イヌ小胞子菌の場合は感染力が強く、露出部に小型の輪状の発疹が多発します。

股部白癬いんきんたむし

 頑癬ともいい、太ももの内側(陰股部)にできる浅在性白癬です。夏季に、男性に多くみられ、時に集団発生することもあります。原因菌は、大部分が猩紅色菌ですが、まれに有毛表皮糸状菌によることもあります。

 中心治癒傾向がある境界鮮明な輪状の湿疹様の発疹で、激しいかゆみがあります。中心部の皮膚は厚く硬くなり、色素沈着がみられ、辺縁は紅色丘疹が輪状に配列、融合して、堤防状の隆起を形成します。陰股部、臀部(でんぶ)に生じやすく、まれに下腹部にまで及ぶこともあります。

足白癬水虫

 足にできる浅在性白癬で、最も頻度の高い真菌症です。主に、足底に小水疱ができる小水疱型(汗疱型)、足の指の間にできる趾間(しかん)型、足底全体に角化のみられる角質増殖型に分類されます。

小水疱型

 足底や足縁に小水疱や紅色丘疹ができるか、または皮がむけ、強いかゆみがあります。

趾間型

 足の指の間の皮がむけ、白くふやけたようになります。親指から4番目の指と5番目の指の間によく発症します。

角質増殖型

 足底全体の角質が厚くなり、皮がむけ、あかぎれも生じます。

爪白癬爪の水虫

 足白癬を放置していると、白癬菌が爪を侵し、爪白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると足白癬をもつ人の半分が爪白癬ももっていることがわかりました。高齢者に多くみられます。

 爪の甲の肥厚と白濁を主な症状とし、自覚症状はありません。まれに爪の甲の点状ないし斑状の白濁のみのこともあります。陥入爪(かんにゅうそう)の原因のひとつにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の周りが赤くなることはまれです。

検査と診断

 ふけや水疱部の皮膚、爪、毛を水酸化カリウムで溶かし、顕微鏡で観察する方法(KOH法)が一般的で、時に培養を行って、菌の同定を行うこともあります。手足に水ぶくれがみられる汗疱(かんぽう)との区別が必要です。

治療の方法

 抗真菌薬の外用が一般的ですが、広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬では内服療法を行います。

 外用は、手足では4週間、そのほかは2週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。爪白癬の場合、少なくても3~6カ月間の内服が必要です。

本田 まりこ

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

デジタル大辞泉の解説

ひふ‐しんきんしょう〔‐シンキンシヤウ〕【皮膚真菌症】

真菌が皮膚に感染または寄生して起こる病気総称人獣共通感染症の一つ。病変が生じる部位によって浅在性皮膚真菌症白癬皮膚カンジダ症など)と深在性皮膚真菌症クリプトコッカス症アスペルギルス症など)に大別される。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

家庭医学館の解説

ひふしんきんしょう【皮膚真菌症 (Dermatomycosis)】

 皮膚真菌症とは、真菌(かび)が皮膚に寄生、感染しておこる皮膚病の総称です。皮膚に病気をおこす真菌(病原性真菌)には、皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)(白癬菌(はくせんきん))、カンジダ、癜風菌(でんぷうきん)、スポロトリックス・シェンキイ、黒色真菌などがあります。ほかに日本には存在しないものも数種類あります。いずれも健康な人にも感染し、皮膚病をおこします。
 また、通常は病原性がないのに、抵抗力が著しく低下しているときに感染症をおこす(日和見(ひよりみ)感染症という)真菌もあります。
 皮膚の真菌症は、浅在性皮膚真菌症(せんざいせいひふしんきんしょう)と深在性皮膚真菌症(しんざいせいひふしんきんしょう)に大別されます(表「浅在性皮膚真菌症と深在性皮膚真菌症」)。浅在性皮膚真菌症は、真菌が皮膚の角質(かくしつ)、爪(つめ)、毛、粘膜(ねんまく)(口腔(こうくう)、陰部)の表面にだけいるもので、日ごろよくみかけるのはこちらです。深在性皮膚真菌症は、真皮(しんぴ)や皮下組織内で真菌が増殖するもので、比較的まれです。
 症状は多彩で、湿疹(しっしん)など、他の皮膚病の症状と似たものがたくさんあるため、診断には病変部に真菌が存在することの確認が必要です。そのため、鱗屑(りんせつ)(細かな皮膚片)や爪、毛などを苛性(かせい)カリで溶かして顕微鏡で観察します。深在性の場合は、組織を一部切り取る検査をして真菌を確認します。
◎白癬(はくせん)とは
 皮膚糸状菌が、角質や角質の変化した爪・毛に感染しておこる病気です。大部分は浅在性皮膚真菌症ですが、まれに白癬菌性肉芽腫(はくせんきんせいにくげしゅ)という深在性皮膚真菌症がおこります。また、真菌自体は角質や毛にしかいないのですが、毛の周囲まで化膿(かのう)が進み、病巣が皮膚の深部にあるようにみえる「いわゆる深在性白癬」という白癬もあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

百科事典マイペディアの解説

皮膚真菌症【ひふしんきんしょう】

糸状菌の一種である白癬(はくせん)菌,カンジダによって起こる皮膚病。頭部浅在性白癬(しらくも),斑状小水疱(すいほう)性白癬(ぜにたむし),汗疱(かんぽう)状白癬(水虫),頑(がん)癬(いんきんたむし)のほか,頭部に膿瘍(のうよう)をつくり,容易に毛髪が抜けるチェルズース禿瘡(とくそう),爪(つめ)が肥厚混濁してもろくなる爪甲(そうこう)白癬(爪白癬),皮膚カンジダ症などがある。また汗疱様白癬疹は各種白癬の際に生じるアレルギー性発疹。
→関連項目真菌症たむし癜風

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

内科学 第10版の解説

皮膚真菌症(真菌症)

 真菌が表皮・毛・爪・粘膜など生体表面に限局性に感染する表在性真菌症(superficial mycosis)と真皮,ときにリンパ節や内臓に及ぶ深在性真菌症(deep mycosis)とがある.表在性真菌症が圧倒的に多く,中でも白癬の頻度が最も高く,ついでカンジダ症,癜風は比較的少ない.深在性真菌症はまれであるが,その中ではスポロトリコーシスを診る機会が少なくない.[大塚藤男]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ひふしんきんしょう【皮膚真菌症 dermatomycosis】

真菌(俗にカビ)が皮膚に感染して生ずる皮膚疾患の総称。真菌が主として表皮の最表層ともいえる角質層に感染する浅在性皮膚真菌症と,真皮内に菌が侵入し増殖して発症する深在性皮膚真菌症に二大別することができる。日本では前者が圧倒的に頻度が高く,皮膚糸状菌症,皮膚カンジダ症,癜風(でんぷう)が代表的である。後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

今日のキーワード

国民投票法

正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」。平成19年法律第51号。2007年(平成19)5月18日に制定され、施行は3年後の2010年5月18日である。この法律は、日本国憲法第96条に定める日本...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android