デジタル大辞泉
「皮膚真菌症」の意味・読み・例文・類語
ひふ‐しんきんしょう〔‐シンキンシヤウ〕【皮膚真菌症】
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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皮膚真菌症 (ひふしんきんしょう)
dermatomycosis
真菌(俗にカビ)が皮膚に感染して生ずる皮膚疾患の総称。真菌が主として表皮の最表層ともいえる角質層に感染する浅在性皮膚真菌症と,真皮内に菌が侵入し増殖して発症する深在性皮膚真菌症に二大別することができる。日本では前者が圧倒的に頻度が高く,皮膚糸状菌症,皮膚カンジダ症,癜風(でんぷう)が代表的である。後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。日本では紅色白癬菌Trichophyton rubrumと毛瘡白癬菌T.mentagrophytesが皮膚糸状菌症の二大原因菌である。皮膚カンジダ症はほとんどカンジダ・アルビカンスCandida albicansの感染により発症する。乳児寄生菌性紅斑,間擦疹型カンジダ症,指趾間糜爛(びらん)症,爪囲炎・爪炎が比較的多い病型である。癜風は俗に〈くろなまず〉ともいい,癜風菌Malassezia furfurの感染により生ずる。夏季,多汗症の青壮年の胸部,背部,頸部などに爪甲大までの褐色あるいは白色の皮疹が多発する。表面に細かい粃糠(ひこう)状の鱗屑(りんせつ)がみられるのが特徴である。
深在性皮膚真菌症のなかで日本で最も頻度の高いスポロトリコーシスはスポロトリックス・シェンキイSporothrix schenckiiの感染により発症する。この菌は土壌中に生息し,切創,刺創など軽微な外傷の創面が土で汚染されたときに,真皮内に菌が侵入すると考えられている。硬結を伴った潰瘍を生ずる。クロモミコーシスは病原性黒色真菌の感染により発症する。原因菌として数種の菌種が知られているが,日本ではフォンセカエ・ペドロソイFonsecaea pedrosoiが最も多い。環状ないし連圏状の境界の明確な浸潤局面を特徴とする。皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症は比較的まれである。
→カンジダ
執筆者:原田 敬之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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家庭医学館
「皮膚真菌症」の解説
ひふしんきんしょう【皮膚真菌症 (Dermatomycosis)】
皮膚真菌症とは、真菌(かび)が皮膚に寄生、感染しておこる皮膚病の総称です。皮膚に病気をおこす真菌(病原性真菌)には、皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)(白癬菌(はくせんきん))、カンジダ、癜風菌(でんぷうきん)、スポロトリックス・シェンキイ、黒色真菌などがあります。ほかに日本には存在しないものも数種類あります。いずれも健康な人にも感染し、皮膚病をおこします。
また、通常は病原性がないのに、抵抗力が著しく低下しているときに感染症をおこす(日和見(ひよりみ)感染症という)真菌もあります。
皮膚の真菌症は、浅在性皮膚真菌症(せんざいせいひふしんきんしょう)と深在性皮膚真菌症(しんざいせいひふしんきんしょう)に大別されます(表「浅在性皮膚真菌症と深在性皮膚真菌症」)。浅在性皮膚真菌症は、真菌が皮膚の角質(かくしつ)、爪(つめ)、毛、粘膜(ねんまく)(口腔(こうくう)、陰部)の表面にだけいるもので、日ごろよくみかけるのはこちらです。深在性皮膚真菌症は、真皮(しんぴ)や皮下組織内で真菌が増殖するもので、比較的まれです。
症状は多彩で、湿疹(しっしん)など、他の皮膚病の症状と似たものがたくさんあるため、診断には病変部に真菌が存在することの確認が必要です。そのため、鱗屑(りんせつ)(細かな皮膚片)や爪、毛などを苛性(かせい)カリで溶かして顕微鏡で観察します。深在性の場合は、組織を一部切り取る検査をして真菌を確認します。
◎白癬(はくせん)とは
皮膚糸状菌が、角質や角質の変化した爪・毛に感染しておこる病気です。大部分は浅在性皮膚真菌症ですが、まれに白癬菌性肉芽腫(はくせんきんせいにくげしゅ)という深在性皮膚真菌症がおこります。また、真菌自体は角質や毛にしかいないのですが、毛の周囲まで化膿(かのう)が進み、病巣が皮膚の深部にあるようにみえる「いわゆる深在性白癬」という白癬もあります。
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皮膚真菌症【ひふしんきんしょう】
糸状菌の一種である白癬(はくせん)菌,カンジダによって起こる皮膚病。頭部浅在性白癬(しらくも),斑状小水疱(すいほう)性白癬(ぜにたむし),汗疱(かんぽう)状白癬(水虫),頑(がん)癬(いんきんたむし)のほか,頭部に膿瘍(のうよう)をつくり,容易に毛髪が抜けるチェルズース禿瘡(とくそう),爪(つめ)が肥厚混濁してもろくなる爪甲(そうこう)白癬(爪白癬),皮膚カンジダ症などがある。また汗疱様白癬疹は各種白癬の際に生じるアレルギー性発疹。
→関連項目真菌症|たむし|癜風
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皮膚真菌症(真菌症)
真菌が表皮・毛・爪・粘膜など生体表面に限局性に感染する表在性真菌症(superficial mycosis)と真皮,ときにリンパ節や内臓に及ぶ深在性真菌症(deep mycosis)とがある.表在性真菌症が圧倒的に多く,中でも白癬の頻度が最も高く,ついでカンジダ症,癜風は比較的少ない.深在性真菌症はまれであるが,その中ではスポロトリコーシスを診る機会が少なくない.[大塚藤男]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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