真菌(カビ)が皮膚に感染、または寄生して起こる病気で、皮膚
白癬は従来、症状から以下のように分類されていました。
・表皮や爪、毛包に限局する
・真皮から深層に強い炎症症状が起こる
しかし近年では、発症部位によって頭部白癬、顔面白癬、体部白癬、股部(こぶ)白癬、
体や手足にできる浅在性白癬で、頭部、手のひら、足の裏、陰嚢、陰股部を除く部位の白癬をいいます。ステロイド薬を外用している人に多く、原因菌は
比較的強いかゆみを伴う輪状に配列する発疹で、小さな水ぶくれ(小水疱)、紅いブツブツからなります。中心にはフケ状のものが付着し、病気が治ったようにみえるので、これを“中心治癒傾向がある”と表現します。
後述する股部白癬ほど皮膚が硬く厚くなく、色素沈着も強くありません。イヌ小胞子菌の場合は感染力が強く、露出部に小型の輪状の発疹が多発します。
頑癬ともいい、太ももの内側(陰股部)にできる浅在性白癬です。夏季に、男性に多くみられ、時に集団発生することもあります。原因菌は、大部分が猩紅色菌ですが、まれに有毛表皮糸状菌によることもあります。
中心治癒傾向がある境界鮮明な輪状の湿疹様の発疹で、激しいかゆみがあります。中心部の皮膚は厚く硬くなり、色素沈着がみられ、辺縁は紅色丘疹が輪状に配列、融合して、堤防状の隆起を形成します。陰股部、
足にできる浅在性白癬で、最も頻度の高い真菌症です。主に、足底に小水疱ができる小水疱型(汗疱型)、足の指の間にできる
小水疱型
足底や足縁に小水疱や紅色丘疹ができるか、または皮がむけ、強いかゆみがあります。
趾間型
足の指の間の皮がむけ、白くふやけたようになります。親指から4番目の指と5番目の指の間によく発症します。
角質増殖型
足底全体の角質が厚くなり、皮がむけ、あかぎれも生じます。
足白癬を放置していると、白癬菌が爪を侵し、爪白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると足白癬をもつ人の半分が爪白癬ももっていることがわかりました。高齢者に多くみられます。
爪の甲の肥厚と白濁を主な症状とし、自覚症状はありません。まれに爪の甲の点状ないし斑状の白濁のみのこともあります。
ふけや水疱部の皮膚、爪、毛を水酸化カリウムで溶かし、顕微鏡で観察する方法(KOH法)が一般的で、時に培養を行って、菌の同定を行うこともあります。手足に水ぶくれがみられる
抗真菌薬の外用が一般的ですが、広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬では内服療法を行います。
外用は、手足では4週間、そのほかは2週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。爪白癬の場合、少なくても3~6カ月間の内服が必要です。
本田 まりこ
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
真菌(俗にカビ)が皮膚に感染して生ずる皮膚疾患の総称。真菌が主として表皮の最表層ともいえる角質層に感染する浅在性皮膚真菌症と,真皮内に菌が侵入し増殖して発症する深在性皮膚真菌症に二大別することができる。日本では前者が圧倒的に頻度が高く,皮膚糸状菌症,皮膚カンジダ症,癜風(でんぷう)が代表的である。後者にはスポロトリコーシス,クロモミコーシス,皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症などがある。皮膚糸状菌症はおもに白癬(はくせん)菌の感染により発症し,頭部白癬(しらくも),体部白癬(たむし),股部白癬(いんきんたむし),足白癬(水虫),手白癬,爪白癬や黄癬などの疾患がある。日本では紅色白癬菌Trichophyton rubrumと毛瘡白癬菌T.mentagrophytesが皮膚糸状菌症の二大原因菌である。皮膚カンジダ症はほとんどカンジダ・アルビカンスCandida albicansの感染により発症する。乳児寄生菌性紅斑,間擦疹型カンジダ症,指趾間糜爛(びらん)症,爪囲炎・爪炎が比較的多い病型である。癜風は俗に〈くろなまず〉ともいい,癜風菌Malassezia furfurの感染により生ずる。夏季,多汗症の青壮年の胸部,背部,頸部などに爪甲大までの褐色あるいは白色の皮疹が多発する。表面に細かい粃糠(ひこう)状の鱗屑(りんせつ)がみられるのが特徴である。
深在性皮膚真菌症のなかで日本で最も頻度の高いスポロトリコーシスはスポロトリックス・シェンキイSporothrix schenckiiの感染により発症する。この菌は土壌中に生息し,切創,刺創など軽微な外傷の創面が土で汚染されたときに,真皮内に菌が侵入すると考えられている。硬結を伴った潰瘍を生ずる。クロモミコーシスは病原性黒色真菌の感染により発症する。原因菌として数種の菌種が知られているが,日本ではフォンセカエ・ペドロソイFonsecaea pedrosoiが最も多い。環状ないし連圏状の境界の明確な浸潤局面を特徴とする。皮膚アスペルギルス症,皮膚クリプトコックス症は比較的まれである。
→カンジダ
執筆者:原田 敬之
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