改訂新版 世界大百科事典 「ハクセン」の意味・わかりやすい解説
ハクセン
Dictamnus dasycarpus Turcz.(=D.albus L.ssp. dasycarpus(Turcz.)Kitagawa)
日本では薬用や観賞用に栽培されるミカン科の多年草で,高さ1mに達する。全体に強烈な香気がある。基部は木質化し,根は肉質で淡黄白色。茎の幼部は白色の長毛でおおわれている。葉は互生し,奇数羽状複葉で長さ約30cm。紙質の小葉は9~13枚,卵状披針形ないし卵形で長さ3~9cm,先端は細長くとがり,基部はくさび形,ふちに鋸歯があり,裏面は脈に沿って毛がある。夏,枝の先端に長さ20cmぐらいの総状花序を出し,大きい花をつける。花は白色または淡紫色。萼片は5枚で宿存性。花弁は長さ2~2.5cm。おしべは10本で花より抽出する。蒴果(さくか)は熟して五つのからに裂開し,裂片の頂端に鋭い突起があり,外面は黒色の腺点および白色の柔毛でおおわれている。朝鮮,中国,シベリアの原産。本種はヨーロッパ産のD.albus L.(英名burning bush,dittany,fraxinella)に近縁で,その亜種と考えられることがある。根皮は白鮮(はくせん)とよばれ,精油の他にジクタムニンなどのアルカロイドを含有し,黄疸や通経に効があり,少量では強心作用を示す。また,総状に大型の花をつけるため美しいので,観賞用に栽植されている。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報