特発性大腿骨頭壊死症(読み)とくはつせいだいたいこつとうえししょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「特発性大腿骨頭壊死症」の意味・わかりやすい解説

特発性大腿骨頭壊死症
とくはつせいだいたいこつとうえししょう

外傷や基礎疾患がないのに大腿骨頭が無菌性、阻血性に壊死をきたして変形したために、変形性股関節症になる疾患。英語表記idiopathic osteonecrosis of the femoral headの頭文字をとって、IONFHと略される。指定難病。病因としては、酸化ストレス、血管内皮機能障害、血液凝固能亢進(こうしん)、脂質代謝異常、脂肪塞栓、骨細胞のアポトーシスなどの関与が考えられているが、詳細は不明である。日本全国の年間新規発生患者数は、2004年(平成16)の厚生労働省の調査によると約2200人で、患者にステロイドの全身投与歴があるものは51%、習慣性飲酒歴があるものは31%、ステロイドとアルコールの両方があるものは3%、両方ともなく狭義の特発性大腿骨頭壊死症といわれるものは15%である。この疾患は、既往歴による危険因子の視点から、ステロイド性、アルコール性、およびその他に分類される。約50%は両側の大腿骨頭に発症し、とくにステロイド性の約70%が両側である。また約10%は、膝(しつ)関節周囲、上腕骨頭、足関節周囲にも骨壊死を合併する多発性骨壊死症である。

 骨に壊死が発生したときは症状がない。数か月から数年後に、壊死した大腿骨頭が圧迫されてつぶれると、股関節部に痛みが出現する。股関節周辺には症状がなく、腰痛、膝部痛、殿部痛などから始まる場合もある。安静により2~3週で痛みが消えることが多く、ふたたび痛みが強くなったときには、大腿骨頭の破壊が進行している。ステロイドの大量服用歴や習慣性飲酒歴があり、上記の症状が出現した場合は、この疾患が疑われて、X線検査MRI磁気共鳴映像法)検査が行われる。早期には鎮痛薬や杖(つえ)などを用いる保存療法が、進行した場合には関節温存手術、さらには人工股関節置換術が行われる。

[大久保昭行 2016年6月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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