玉垂の(読み)たまだれの

精選版 日本国語大辞典 「玉垂の」の意味・読み・例文・類語

たまだれ‐の【玉垂の】

  1. ( 古く「たまたれの」とも )
  2. 玉を緒(お)で貫いて垂らし、飾りとしたものの意から、「緒(を)」と同音を含む語にかかる。
    1. (イ) 地名「越(をち)」にかかる。
      1. [初出の実例]「玉垂乃(たまだれノ) 越の大野朝露玉裳はひづち 夕霧に 衣(ころも)は濡れて」(出典万葉集(8C後)二・一九四)
    2. (ロ)小簾(をす)」にかかるが、転じて、「こす」にもかかる。一説に玉で作ったすだれの意でかかる。
      1. [初出の実例]「玉垂之(たまだれの)小簾(をす)の間(ま)通し一人ゐて見るしるしなき夕月夜かも」(出典:万葉集(8C後)七・一〇七三)
    3. (ハ) 「小瓶(をがめ)」にかかる。転じて、「小瓶(こがめ)」にもかかる。
      1. [初出の実例]「たまだれのこがめやいづらこよろぎの磯の波わけおきに出でにけり〈藤原敏行〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・八七四)
      2. 「太万多礼乃(タマタレノ) 小瓶(をがめ)を中に据ゑて 主(あるじ)はも や 魚(さかな)(ま)きに 魚取りに こゆるぎの 磯の若藻(わかめ) 刈り上げに」(出典:風俗歌(9C前‐11C中か)玉垂れ)
  3. ( (ロ)から転じて ) 地名「こす」にかかる。
    1. [初出の実例]「いとはやも露ぞ乱るる玉だれのこすの大野の秋の初風〈寛尊法親王〉」(出典:新拾遺和歌集(1364)秋上・三二〇)
  4. 玉で作ったすだれの意で、「御簾(みす)」にかかる。
    1. [初出の実例]「たまたれのみすのうちには梅花おもひかけたる人やをるらん」(出典:兼澄集(1012頃))
  5. ( から転じて ) 「御簾(みす)」と同音の「見ず」にかかる。
    1. [初出の実例]「君により我が身ぞつらき玉だれの見ずは恋しと思はましやは〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋一・五六六)
  6. すだれがすけて見えるところから「好ける」にかかる。
    1. [初出の実例]「たまだれの好ける心と見てしよりつらしてふ事かけぬ日はなし〈よみ人しらず〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)恋一・六六四)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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