小野道風(おののとうふう)筆の巻物。宮内庁蔵。楮紙(こうぞがみ)4枚を継いだ料紙に、唐の白楽天の詩集『白氏文集(はくしもんじゅう)』巻第64の律詩4首を、題とも40行にわたって揮毫(きごう)している。書き出しが「玉泉南澗花奇恠……」に始まるため「玉泉帖」とよばれる。楷(かい)・行・草の三体の書風を交えた自由奔放な書きぶりで変化の妙をみせ、署名はないが、道風の真跡に疑いない『屏風土代(びょうぶどだい)』と同筆である。三跡の一人として名高く、在世中から能書をうたわれた道風の実力を発揮したもので、調度手本として執筆したものである。巻末に自ら、「是(これ)を以(もっ)て褒貶(ほうへん)を為(な)すべからず。例体に非(あら)ざるに縁(よ)るのみ」と謙遜(けんそん)の跋語(ばつご)を2行加える。通例とは異なる書風で執筆するという道風の書に対する前向きな態度がうかがわれる。
[島谷弘幸]
…永く非常な名声を保ったため,道風の筆跡と称せられる遺品は数多いが,疑いを入れぬものは必ずしも多くない。藤原定信が奥書をした《屛風土代(びようぶどだい)》(宮内庁),それと書風の全く一致する《白楽天 常楽里閑居詩》(前田育徳会),道風に書かせたことが史書にしるされている《円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号(しごう)勅書》(東京国立博物館保管),《三体白氏詩巻》(正木美術館),自ら〈例の体に非らず〉といった,道風としては珍しく気骨のある《玉泉帖(ぎよくせんじよう)》(宮内庁)などが主要なものである。ほかに,10通をこす書状があって,その中には確実に道風の書風をしるべき仮名も存したのであるが,今日原本の所在は不明で,江戸時代末期に刊行された《集古浪華帖》に模刻をみるのみである。…
※「玉泉帖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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