日本大百科全書(ニッポニカ) 「王冕」の意味・わかりやすい解説
王冕
おうべん
(1335―1409)
中国、元(げん)末明(みん)初の文人画家。同時期には墨梅(水墨画の梅)専門の画家が多く出ているが、そのなかでもっとも著名な画家。諸曁(しょき)(浙江(せっこう)省諸曁県)出身。字(あざな)は元章。号には老村、煮石山農、山農、飯牛翁(おう)、竹堂、会稽(かいけい)外史、梅花屋主などがある。幼少から好学心が強かったが、家が貧しく苦学した。会稽の儒者韓性(かんせい)に認められて門下生となり、通儒と称されるまでになった。科挙の試験をたびたび受けたが失敗し、官につくのを断念し、諸方遊歴ののち、元末の乱を避けて九里山に隠栖(いんせい)し、画作して生活した。墨竹も得意としたが、とくに墨梅が高く評価され、南宋(なんそう)の楊補之(ようほし)と比較せられた。その名声は室町時代のわが国にも知られ、作品も伝来し、応永(おうえい)期(1394~1428)の墨梅画家物外などにも影響を与えている。代表作の一つに正木美術館所蔵の『墨梅図』がある。
[星山晋也]