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…しかし精神的な生はまだ個体化されていない。それゆえヤスパースは精神的な生を〈実存〉へと個体化し,ハイデッガーもディルタイの影響下で人間存在を生から〈現存在〉へと個別化したのである。 〈生の哲学〉は実存の哲学へと個体化の道をたどるが,その開拓した人間の生すなわち他に依存せず自立的に飛躍,表出,超越を遂行する自発性は,実存の哲学においても完全に受け継がれたとは言えない。…
…同時に,従来は客体と対象との側面から,すなわち自然,神,動物,機械との差異においてのみ認識されてきた〈人間存在〉を,真に〈人間存在〉として根本に据え,人間存在に基づく存在論を建設しようとしたのは,実存哲学であり,哲学的人間学であった。 ハイデッガーは人間を〈現存在Dasein〉と呼び,現存在の存在・存在意味を〈関心〉〈時間性〉とし,現存在の分析論を〈基礎的存在論Fundamentalontologie〉と呼び,人間以外の存在者に関する諸存在論の基礎を与えるものとした。彼は基礎的存在論を〈現存在の形而上学〉の第1段階とし,人間の存在を通路とする基礎的形而上学を構想した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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